港町05
「どうし「お待たせ致しました~。」?」
問い掛けた私の言葉は、料理を持ってきた店員さんの声に掻き消された。
ま、良いけどね。
視線を下に向ければ、今度持ってきてくれたのは私の頼んだカツオザメ定食だった。
これは焼き物と刺身とがお盆の上に揃っていて、凄く魅力的だったんだよ。
「やった~。いただきますっ。…っと、さっき貰ったから、悠希にこっちをあげるよっ。」
早速箸を手に取り、食べようとした私。でも、人のを貰うだけでは失礼かと思い至った。
相手の返答を聞く事なく、刺身を一切れ取ると、有無を言わさず悠希の口に突っ込む。
「っ?!」
目を見開く悠希を見て、そんなに美味しいのかと、私もすぐに次の一切れを自分の口に入れた。
ん~っ、こっちも美味し~っ。
脂がのってながら後味サッパリって、どうなのよこれっ。
イルグスクの刺身も美味しかったけど、私はカツオザメの方が好きかも~っ。あ~っ、焼いたのも美味し~っ。
「ん?…どうしたの?」
両頬を押さえて身悶えていたのだが、不意に二人の様子が気になった。
何故かあんぐりと口を開けて固まっている悠希と、複雑な表情の雛。
悠希の方は顔が赤い気がするし、雛は呆れと…困惑?何だろう…。
「食べないの?」
再度、二人に問い掛けた。
「あ、あぁ…食べる…。」
「そうね。」
漸く再起動する二人。
何だろう?この、微妙な空気。
小首を傾げた私だったけど、一瞬にして周囲の景色が霧に包まれる。
「っ?!」
慌てて立ち上がろうとしたのに、意識に反して身体はピクリとも動いてくれなかった。
そして気付く。
あ~、これ…いつものだ、と。
現在地である港町リオルガから程近い、大河ハディスンを遡る。
何故か私の視界は空中にあり、高速で移動していた。空飛ぶ鳥のものだと気付いた時、不意に急降下を始める。
いやいや、ちょっと待ってぇっ。
視角のみとはいえ、高速で落下する感覚は頂けない。
急速に近付いてくる地面に、私は思わずギュッと瞼を閉ざした。
バサリと大きく羽音が聞こえる。
そして同時に幾つも。
ぅわ~っ。
思わず見開いた視界いっぱいに広がった、白い鳥の群れと青い空。碧い海。
これが旧世界の風景だと、私は誰に聞く事なく知っていた。
旧アメリカ──自由の女神像が、そこにたっている。
当時のフランス彫刻家フレデリック・バルトルディが設計し、独立100年を記念してフランスから寄贈されたという、自由の象徴だったはず。




