港町03
「前回来た時より、少し立派になってるかしら。」
「そうかぁ?ま、儲かってるんだろ。行こうぜっ。」
私程ではないものの、雛も気が引けている様子。
それでも悠希は全く気にならないようで、あろうことか私の手首を引いて歩いていく。
「ちょ、ちょっと…っ?!」
「こんにちは~。3人なんですけど、良いっすか?」
ひきづられて慌てる私をよそに、悠希は店の入り口を開け、中の人に声を掛けた。
「いらっしゃいませ~。どうぞ、奥へお願いします~。」
「どうも~。」
緊張で身体が硬直する私の頭上を声が行き交う。
どうやら店員さんは、子供な私達相手でも嫌な顔一つ見せない出来た人のようだ。
そして変わらずひきづられて歩く私の後ろを、少し緊張気味についてくる雛。
うん。お店での食事が少ないのは、雛の人見知りもあって、なるべく避けているんだよね。
まぁ、雛の作るご飯が美味しいって事が一番なんだけど。
「どれにしようかな~。唯も早く決めろよ?」
腰を落ち着けたかと思うと、私にメニューを突き出し、悠希は壁のメニューを見回している。
こういう図太い─ゲフンゲフン─気後れしないところを見ると、本当に旅慣れているんだなって思う。
「おっ?よし、決めた。俺はイルグスクの刺身定食~。」
悠希は壁のメニューから、本日のおすすめを選んだ。
意味あり気に雛と視線を合わせてたけど、私にはサッパリなので放置。
「私は焼きマシロにするわね。」
雛も早々に決める。
「えっ、二人共早っ。わ、私は…カツオザメ定食っ。」
焦りつつ選んだメニューだった。
けどホッとしつつ顔を上げると、何故か二人の視線が生温い。
「な、何?」
「んにゃ、何でもないさ。」
狼狽えながら問い掛けるが、悠希からは笑顔と共に曖昧な返答が返ってきただけだった。
「唯、カツオザメが好きなのかしら?」
「え…?んと…深い意味はなくて、単に思い浮かんだから?」
雛に問われ、私は小首を傾げながら告げる。
元より新鮮な魚は、内陸部ではあまり食べられないのだ。
「唯と雛乃は、内陸部に住んでるんだろ?」
「うん。だからあまり魚は食べた事がなくって、文献で知る姿くらいかなぁ。一応、味の方も書いてあったけど。こればかりは、人それぞれだからね。」
悠希の問いに、今度は普通に答える事が出来た。
私は、私の今知る知識の中で、今を生きるしかないんだもん。




