港町02
「で、雛乃は水流の宮、覚えてるだろ?」
当たり前のように、悠希は雛に問う。
「えぇ。けれど覚えているかどうかが問題ではなく、味が変わっていないかよ。」
それを受けて、雛が淡々と答えた。
そうだよね、お店は同じでも、味が変わったりするもんね。って、私はそのもの自体を覚えてないんだけど。
「んじゃ、決まりだな。今から行くぜ~。」
言うが早いか、足を向けていた方向を突然変える悠希。
ちょっと待って。
私達、今から冒険者の宿に行くんじゃなかった?
「御門さん。」
静かに悠希を呼び止める雛。
うん、そうだよね。
ここは初めに目的としていた…。
「そちらではないわ。水流の宮は、あちら側の通路を右よ。」
だが、雛から告げられた言葉は、飲食店の方である。
「そうだったっけ?」
「えっ?雛もそっち?」
「えぇ、お腹が空いたもの。旅に出てから、あまり贅沢をしないようにしているのだし。久し振りの外食だわね。」
驚いて突っ込む私だったけど、雛は淡々と答えた。
悠希は周囲を見回しながら、方向を確認している様子。
確かに、無駄に買い食いしているのは私なんだけど…。そもそも旅にはお金が掛かるから、贅沢はダメなんだけどね。
「だ、だよねぇ~。」
苦笑いしながらも、同意せざるを得ない私。
っていうか、雛が拘る程美味しいの?
「唯も反対意見はないみたいだし、そんじゃ改めて、こっち~。」
いつも以上に楽しそうな悠希は、雛が先程示した道を行く。
「そうね。行きましょう、唯。」
「は~い。」
二人に先導されつつ、私も足を向けた。
今更異存はないし、見知らぬ港町で置いていかれても非常に困るもんね。
ここは結構大きな町だからか、人も物も、様々な種類が入り乱れている。
そしてそんな中、目の前に現れた大きな建物。
この大きな港町にあって、それでも集客率はダントツに見える。
「ここ?」
僅かに腰が引けてしまうのは、貧乏性故か。
「そうだぜ?…何だよ、唯。店を前にして、ビビってんのか?まぁ、デッカイ店だからなあ。けどここ、見た目と反して、料金設定は良心的なんだぜ。」
にこやかに悠希が告げる。
いやいや、とてもそうは見えないんだけど?
私が見上げた建物は絢爛豪華で、明らかにお子様な私達がおいそれと入れる店構えではなかった。




