港町01
私達は今、大きな港町に来ている。
冒険者の宿に寄る目的で、世界の欠片を探す旅のカモフラージュの為だ。
「お~、懐かしいなぁ。」
周りを見回しながら、悠希が笑顔を浮かべている。
「悠希ってば、ここに来た事あるの?」
三人で連れ添って歩いているのだが、普段のお喋りは基本的に悠希と私の二人だ。
そして私は、深い意味もなく問い掛けてみる。
そもそも私や雛は、拠点としている集落からあまり離れなかった。
まだ年齢が低い事もあり、たまに行う冒険者の仕事も、近辺で遂行出来るものばかりだったのである。
「何言ってんだ?唯も来ただろ。」
普通に返してくる悠希の瞳からは、嘘偽りが見えない。
つまりはあれだ。それは私の忘れてる記憶なのだよね?
「…もしかして、8歳の頃?」
訝しみつつも、私は悠希に首を傾げながら問う。
覚えてない事を当たり前のように言われても、困るんだけどな。
「あ~…。悪い、そうだ。俺達はこの港町リオルガに、5年前に来た事がある。」
「ふぅん。」
気まずそうな悠希の表情を見て、私の中のモヤモヤは消えた。
細かい事を気にしたって、仕方がないもんね。
「とりあえず、冒険者の宿に行きましょう。唯の記憶の事は、今更追求したところで意味がないもの。」
私達の空気を察したのか、雛が声を掛けてくる。
そうなのだ。第一の目的は、冒険者の宿に行く事。
けど何故かな。涙が出てきちゃうよ。
「雛乃は、唯相手だと手加減ないな。少し上げてから蹴り落とすの、やめた方が良いんじゃね?」
苦笑いしながら、悠希が私の頭を撫でてくれた。
うん、ありがとう。違う意味でささくれだった心が、少しだけ癒されたよ。
「あら。私は唯を、少しも苛めてないわ。」
不思議そうに答える雛の言葉には、全く含みも悪気もない。
そうだよね。雛は物静かで優しくて、頭が良くていつも冷静なお母さんタイプの、でも極度の人見知りさんだもん。
嘘偽りのない態度で私に接してくれてる事、勿論知ってるよ。
「淡々と吐き出される毒に、唯が何気に傷付いてるぞ?まぁ、悪意がない事が救いだけどな。」
首を竦める悠希。
当たり前だよ。
悪意ある相手と、ずっと一緒にいる筈ないじゃん。




