訪問者01
「もう良いよ、悠希。けど、次からは気を付けて。…雛、次は何処が近いかな?」
今の出来事を無理矢理なかった事にして、私は雛に問う。
勿論、雛は困った顔をしていたけど。
「そうね。ここからなら…。」
雛はマジックバックから文献の模写を取り出そうとして…、やめた。
ん?と、首を傾げたのは私だけで、悠希は私の背後へ鋭い視線を送っている。
そこで漸く気付いた私は、ゆっくりと振り返ってみた。
「人…だよね?」
呟きながらも、私の言葉が疑問系になる。
けど、それも仕方がないのだと思っていただきたい。
「あぁ~…、多分な。」
「私もあまりの出来事に、すぐに言葉を出せなかったわね。」
苦笑いを浮かべたのは、悠希。続けて、雛が僅かに首を竦めた。
そう。私達の目の前に現れたモノを見れば、その姿から大概の目撃者が眉根を顰めるだろうと予測出来る。
「…何で、カボチャ?」
私は再度、反対側にコテンと首を傾げる。
ストレートに言ってしまえば、そう言う事だ。
前方からは何故か、カボチャ頭の人物が接近してくる。
正確には、陶器製のカボチャ頭か。明らかに、人がそれを被っている。
服装は厚手のコートを羽織っている為、性別までは分からない。
「さぁな。よほど顔を見られたくないんだろ。」
呆れたように呟く悠希だが、その右手は剣の柄に置かれていた。
警戒は解いてない、という意味なのだろう。
「…あの~…、少し良いですか~?」
カボチャ頭が迷いもなく、私達に声を掛けてきた。
声はくぐもっていているが、男性的ではない。
けどこれは、私達が進行方向に偶然居合わせた訳ではなく、意図的に接近してきたともとれる。
「嫌だけど。」
即行拒否する悠希だ。
横を見ると、雛は人見知り発動中。
私の背後に隠れ──彼女の方が背が少し高い為、完全には隠れられていないのだけど──、視線すら合わせる気はない様子である。
「そんな事を言わずに~。」
手を伸ばし、ヒラヒラと上下に振りながら告げるカボチャ。
けど、間延びした喋り方はわざとなのか、カボチャ兜を見ていると余計に癇に障る。
それでも、自分達とそう歳が違わない女の子かな?くらいに思える。
「お前、人に声を掛ける格好っての知らないのか?」
悠希が不機嫌を隠そうともせず、鋭い視線と共に言葉をぶつけた。
いや、全くもってその通りだよ。
ましてや女の子なら、顔を出した方がこちらの敵意を削げるのに。




