光の連鎖03
「その欠片も、同じ仕様なのか?」
私の持つ世界の欠片に、無遠慮に顔を近付ける悠希。
近すぎるよね、この距離感って。
思わず雛に視線で訴えると、あまりの近さに引いている彼女がいる。
うん。人見知りが完全になくなった訳でもないから、必要以上の近距離には耐性がないよね。
「近すぎ、悠希。」
私は遠慮なくその頭を押し退けた。
「え?あ、悪い。」
自分の行動に自覚がなかったのか、私に押されて気付いた様子。
僅かな戸惑いが見えたので、無自覚の事だとして今回は許そう。
「えっと、今回のは…中に凱旋門が入ってるね。」
私は確認の為、透明な球体の中を覗き込む。
当たり前だけど、そこには小さな石造の門が入っていた。
「パリ?だっけ。」
「そう。」
悠希の問い掛けに、言葉少なに応える私。
だって欠片の中の凱旋門が綺麗すぎて、意識の大半はそっちに持っていかれてたんだもん。
「あら?形状が少し違うわね。」
そんな雛の言葉に、私は我に返った。
「え?」
戸惑いつつも、手にしているもう一方の欠片と見比べる。
確かに双方とも球体ではあるものの、完全な丸ではなかった。
微妙な凹凸があり、何かを示している。
「何だろ…。」
二つを様々な角度から観察する、私と雛。
ところが、そこへ伸びてくる手があった。
悠希である。
「くっつくんじゃね?」
そう言いつつもあろう事か、二つの欠片をつけてしまったのだ。
きゃーっ。
私が内心叫んだのは、仕方のない事だと思う。
「何してんの、バカ悠希!」
慌てて奪い返したそれだったが、時は既に遅し。
ピタリと嵌まった二つの欠片は、初めから一つであったかのように放れなくなってしまったのだ。
終わった…。
雪だるまのようになった世界の欠片を手に、私は茫然と宙を見上げる。
東京タワーの隣に凱旋門って、おかしいよね。
世界の欠片が幾つか分からないけど、文献にはたくさんの存在が記されている。
つまりは旧世界がそれだけ集まって、漸く一つになるんだろう。けど…。
今私達の目の前にある欠片は二つ。しかしながら、一つにくっついてしまっているのだ。
「あ~…、マズッた?」
欠片に視線を落としたまま動かない私に焦りを覚えたのか、悠希が苦笑いを浮かべながら問い掛けてくる。
覆水盆に返らず。
私の中に、文献で見た旧世界の言葉が浮かんだ。
そうだよね…。取り返しのつかない事はあるよね…。
もはやどうにもならない事に、私はこれ以上頭を悩ませる無駄を悟った。




