潔(いさぎよ)い降参04
「さぁ、唯。このままでは怪しまれてしまうわ?一旦この場を立ち去るか、彼に立ち去ってもらいましょう。」
そして続けられた雛の意見に、私はその手があったかと手を打つ。
いつまでも押し問答していても仕方がないし、べつの追跡者がいるのなら長居は無用なのだ。
私はそのまま悠希へ振り返る。
「悠希?」
「ん?…………ええっ?!俺っ!?」
声を掛けると、数瞬思考を巡らせた後、驚きを返してくる悠希。
「な、何でっ?」
先程の動揺が残っているのか、まだ少し赤みのある顔で問い掛けてきた。
そんなに考える事かな?
私にとっては、簡単な解決策だったのに。
「だって、出来るでしょ。」
事も無げに告げてあげる。
「だ………、出来るけど…っ。俺はアイツを解放するって言ったんだぜ?」
話している間に、いつもの悠希に戻ってきたようだ。
けれど、どうやら反対意見があるらしい。
「この場に、とは言ってないじゃん。」
「そうね。魔征軍に突き出す訳でもないのだから、この場から少しばかり遠退いてもらうくらい、問題ないのではないかしら。」
私の言葉に、雛が賛同してくれる。
魔征軍って、何だっけ?悪い人を捕まえる人とかだっけ?
とにかく、実際に距離を離してもらうだけなんだよ。
「それは…、そうだが…。」
それでも、腑に落ちない感じの悠希だ。
彼の中の正義に反するのかもしれない。
「じゃあ、好きな方向へ飛ばしてあげるとか言えば?相手との交渉なら、一方的な力の行使じゃないもんね。」
不意に思い付きた事を告げた。
そうだよね、意見を聞けば良いんだよ。
どうせあの科学者も、棒人間ロボットが動けない限りは、この場を立ち去れないんだろうし。
「……それも一理あるか。よし。」
少し考える素振りをした後、納得出来たのか顔を上げる。
そしてそのまま悠希は、自称バーニーの方へ歩いていった。
「なぁ。」
ロボットの装甲を開けて中を弄っている自称バーニーに、悠希は迷いなく声を掛ける。
「……何さ。僕は少しばかり忙しいんだけど、そこんとこの空気を読んでくれないかな。」
顔を上げる事なく、自称バーニーは応えた。
「単刀直入に言う。潔く、ここから飛んでくれないか。」
ハッキリと告げられた内容に、自称バーニーはゆっくりと顔を上げる。
「はあ?」
そして続けて発せられた声は、まさしく彼の心中を表している不機嫌な音だった。
まぁ、そうなるよね。
私もそんな事を言われたら、同じ反応をしそうだもん。




