潔(いさぎよ)い降参03
「お前、適当な事を言ってるんじゃないよな。」
私と同じように不安を煽られたのか、悠希が鋭い視線を自称バーニーへ向けた。
けれど、彼の表情は変わらない。
「まぁ、どうとるかは君達次第さ。僕はただ、見聞きした情報を口にしただけ。自らの解放を条件にね。」
肉体を拘束されている訳ではない為、敗者であるにも拘わらず余裕が見えた。
でも私達の目的は、科学者の殲滅ではない。
「分かった。んじゃ、それらの情報を得る替わりに、お前を解放する。もう俺等に絡んでくるんじゃねぇぞ。」
悠希は腕を軽く振り、背を向けた。
というか、私と雛の方へ振り返る。
「んじゃ、どうする?この辺りを探索するか、移動するか。」
手にしていた細身の剣を左腰の鞘に戻しつつ、こちらへ歩いてくる。
もはや悠希の中では、背後にいる自称バーニーの事はいないも同然なのだろうか。
「…ねぇ?」
「えぇ…。」
気になって仕方がない私は、隣に立つ雛に同意を求めた。
すると雛も、困った顔で首肯してくれる。
「何だよ。」
不満そうに悠希が小首を傾げる。
いやいや、おかしいよね。そこにいるってば、科学者。
自称バーニーの方は何をしているのかというと、呑気にも棒人間ロボットの修理である。
「あ、僕の事はお気になさらず。」
視線を感じたのか、自称バーニーがニッコリと笑顔を返してきた。
う~ん…、この人は何て言うか…図太いよね。
「あぁ言っている事だし…っ?」
「バカねっ。あの人の目の前で欠片を見せたい訳っ?!」
悠希の楽観的な言葉に、思わず私は彼の襟首を引っ張り、小声で怒鳴り付ける。
物凄く驚いた顔をしてるけど、そんな事知らないもん。
30センチ以上の身長差は、こうでもしないと埋まらないのよ。
「あ…ま…っ。」
呼吸が触れ合う程の距離に、悠希は酷く狼狽している。
だが言葉が紡げず、アワアワと半端に唇だけが動いていた。
顔が赤く見えるのは気のせいかな。
っていうか、顔が近い?
「ほら、唯?御門さんも反省しているようなのだから、その辺りで解放してあげてはいかがかしら。」
ゆったりとした言葉ながら、何故かピリピリとした空気を纏った雛。
どうしたのかな?なんて思ったけど、確かにずっと引っ張っているのも疲れる。
「うん、分かった。…けど、もう少し考えてよねっ。」
私はすんなりと手を放し、それでも足りず、腰に手を当てて睨み付けた。
勿論、私と悠希の身長差だと、下から見上げる形になっちゃうんだけど。…くそぅ。




