過去視より05─皐月(さつき)side─
「あぁっ、大丈夫?」
慌ててあたしが駆け寄るけど、凜はすぐにその汚れごと、落ちたお皿を消してしまう。
ふあ~って、霧みたいに掻き消えちゃったの。
「記憶ノ魔法、お皿。」
そして何事もなかったかのように、新しいお皿を具現化する。
でもね、少しだけ頬が赤いの。
ここは追究しちゃ、ダメなんだよねぇ。
そう判断したあたしも、何事もなかったかのように再度、そのお皿にシチューを取り分けた。
「さぁ、食べよっか。いただきま~すっ。」
「いただきます。」
二人して食事の前に座ると、両手を顔の前に合わせる。
「美味し~っ。」
温かいシチューを口一杯に頬張り、あたしはほっぺたを押さえて声をあげた。
あたしはご飯なんて作れないけど、凜と一緒に、ずっと二人でトレジャーハンターをしている。
凜はご飯が作れなくはないみたいだけど、基本的に調理要らずの魔法があるからね。
彼女がお嫁さんなら、本当に助かるんだよぉ。食事は勿論、服だって買わなくて良いし。
あ、記憶が全てだから、新しい物は常に細かく調べるんだよねぇ?この前だって…。
「皐月、手が止まってる。変な妄想してないで、ご飯食べる。」
「あ、うん。えへへっ。」
凜に注意され、あたしは再び食事に集中する。
けどここ、荒野なんだよね。
あたし達の今を考えると、ピクニックなんて、可愛いおままごとみたいなもんだよねぇ。
パンもフワッフワで、野菜もシャキッシャキ。
今日のドレッシングは、コーン・ドレッシングだ。
記憶の再現っていっても、味も形も、色も匂いもだよ?普通、ここまで細部に拘って覚えてられないもんね。
さすがだよぉ、凜。出会えて良かったよ、本当に。うふふ~っ。
「何、皐月。また変な妄想してる。」
食い入るように見つめていたからか、凜が不快そうな顔を向けた。
へ、変な妄想じゃないもん。
「美味しいな~っ、美味しいな~って、食べてるだけだもんっ。」
あたしがそう言った途端、ガタッと物凄い勢いで、手にしていたスプーンを置いて立ち上がる凜。
どうしたのかと思って見上げたら、何とまぁ、顔が真っ赤だった。
「べ、別に、嬉しくなんかないんだからっ。」
ビックリな、ツンデレ発動である。
「うん、分かったから。だからご飯、食べよ?」
ニコッと笑顔を向け、あたしは大きな口を開け、シチューを頬張る。
ご飯の度に、誉めるとこうなのだ。
いい加減、あたしと対応に慣れるよねぇ。
それに、ご飯は楽しく食べたい。




