科学者とは05
「唯。子供の頃の事、何処まで覚えてる?」
不満を顕にしている私に対し、上目遣いで問い掛けてくる。
いやいや、上目遣いでって、おかしいよね。
だって悠希は、私よりうんと背が高いんだもん。
それに気付いた私は、視線を悠希の身体に向ける。
予想通り、物凄く腰を曲げている。
…何か嫌。
「そんな事、科学者がどうとかって今の話と、全く関係ないよね。」
唇を尖らせ、私はその問いに答えない。
「そ、か。けど、俺が知っている科学者ってもんは、それだけだ。魔法じゃない、科学力を武器とする者達。魔力を持たない劣等感から、ひどく魔法使いを憎んでいる。それこそ、この世界から排除したいと思わんばかりに、な。」
一息にそれだけ告げ、悠希はニッと笑みを浮かべた。
何だか、溜めに溜めた筈の情報が、少しも真新しくなかった感じがするんだけど。
「唯の記憶は、心眼で得られる記憶に、少しずつ上書きされていくみたいなのよ。旧世界の記憶と経験を持つ分、こちらでの思い出を忘れていく事が多い、と言った方が良いのかしら。」
ムッとした私の頭を撫でつつ、雛が優しく教えてくれる。
って…、ん?何だか、物凄い事実を突き付けられた気がするんだけど。
「あれ?もしかして、気付いてなかった?あぁ、普段は雛乃としか一緒にいないからだろ。もっと人付き合いを大切にしろよ?」
混乱する私に、更なるストレスを与えてくる悠希。
「あ…、悪い。ホント…。」
声と共に、私は悠希の胸に抱き寄せられていた。
あ…れ?何だか視界が歪んだかな~って思ったら、何で?
「もう…悠希、邪魔だよっ。」
私は思い切り腕を突き出し、悠希を押しやる。
そして目を擦った後、私は歯を剥き出してイーッとしてやった。
「あら、可愛いわね、唯。でも、顔を擦ってはダメよ?」
雛が柔らかく微笑みながら、ポケットから出したハンカチで、私の目元を優しく拭ってくれる。
「う~っ…雛、大好きっ。」
感無量で雛に抱き付く私。
「ったく…、俺の立場は何?本当にマジ、次からは俺も一緒に旅をするからなっ。」
何故か不快感を顕にする悠希だが、内容は別離ではなかった。
何、言ってるの?
「何で悠希が、私達と一緒に旅をするとか言ってるのっ?」
「危ないだろ?女の子二人旅じゃっ。」
「危なくないよっ。私も雛も、強いんだからっ。」
「今回だって、危なかったじゃねぇかっ。」
私と悠希の、売り言葉に買い言葉が始まる。
互いが言い合い、ガルルルっと噛み付きそうな顔で言葉を投げ付けていた。




