科学者とは02
「唯が私の事を大好きなのは、充分に分かったわ?けれど、私は…。」
何故か途中で言葉を止めた雛。
えっ?何でそこで止めちゃうの?
想像しうる様々な憶測からのショックに、私は雛から少し身体を放す。
だって、すぐに言葉を返してくれないのは、私の思いとは違うからなのかもって…思っちゃうじゃないっ。
「いくら好きでも、人目を憚らずに抱き付きはしないかしら。」
淡々と告げる雛。
抱き付いちゃ…、ダメ…。
うっ…、何だかとても大ダメージを受けたよ。
告げられないショックよりも、告げられたショックは計り知れないんだね。
雛から放れた私は、大きく後ろによろめいたけど、何故か当たり前のように悠希に背中を支えられた。
…いやいや。待ってよ、私。
思考の中で打ち拉がれる自身に、最後の希望を持てと勇気づける。
人目を憚らずに…?嫌いとは、言われてないよね?ここには私達以外の、悠希がいるからだよねっ?
勝手にそう解釈し、潤々とした視線を雛に向ける。
「もぅ…。そんな目をしたら、これ以上突き放せないではないの。」
雛は、そこで小さく溜め息をつく。
けど、その後で手を伸ばし、私の頭を優しく撫でてくれた。
「雛~っ。」
「おっと…っ。エンドレスだから、ここでストップな。俺の話を聞きたいんだろ?」
再び雛に抱き付こうとした私だけど、しっかり悠希に肩を押さえられて止められる。
そして彼のその言葉に、やっと本題を思い出した。
雛が回復したから、科学者の話を聞かせてくれるって事で、宿の部屋に彼が来たんだったよ。
「あ、ハハハ…っ。そうだったね、悠希。」
私は肩を押されられたままだけど、そのまま愛想笑いを浮かべて振り返る。
忘れてなんかいないよ~アピールは、多分通用してない。
「全く…。雛乃は、それで良いか?」
私へ呆れ顔を向けて肩を竦めた後、悠希は雛に真っ直ぐな視線で問い掛けた。
「だ、大丈夫…よ。」
面と向かって私に話す時とは違い、少し緊張気味の雛。
彼女には前もって、風ノ魔法でこの空間を包み込む事をお願いしておいた。
何故かは知らないけど、世界の欠片の情報が漏れている可能性があるから。
って言っても、実際に文献には載っているのだから、極秘って訳でもなかったんだけどね。




