科学者とは01
「もう、熱は下がったようだな。」
ニカッと笑みを浮かべる悠希。
宿屋の部屋の中、三人で立っている。
あれから二日経ち、雛はすっかり元気になっていた。
「ありがとう…。」
「良かったよ~。本当に、良かったよ~っ。」
人見知り発動中の緊張に包まれた雛だけど、私はその首に抱き付いて感極まっている。
「おいおい、雛乃。まだ今の俺に馴染めないのか?…ってか唯、ちょい放れろよ。まだ雛乃は、病み上がりなんだぞ?」
雛の対応に苦笑いの悠希だったけど、私に対しては馴れ馴れしい。
今も両肩を掴まれ、彼の身体の方へ引き寄せられているのだ。
「ぶぅ~…っ。悠希ってば、私の扱いが酷くない?私は大好きな雛に、やっとギュッて出来たのにぃ。」
不満に唇を尖らせると、すぐにその唇を摘ままれる。
ぅきゃ~っ!
「~~~~っ。」
心の叫びは声にならず、私は意味不明に叫んだ。
「そんな顔してると、アヒルになるぞ?」
後ろからニヤリと悪い笑みを見せる悠希。
すぐに放してくれるんだけど、これは地味に痛い。
「そうなったら、絶対に悠希が悪いんだからねっ。」
振り返って、思い切りその胸をパーで叩く。
唇を摘ままれて少し涙目になっちゃったけど、恨みがましく睨んでやった。
少し悠希が怯んでたのは、よほど私が怖かったんだと思う。
「唯?…随分、御門さんと仲が良くなったのね。」
そんな私の頭を優しく撫でてくれる雛。
悠希に聞かれたくないみたいに、小さな声で問い掛けてきた。
初めの頃、私が彼に警戒していた事を悟られているよ~。
「そ、そんな事ないよ~っ。一番は雛だもん。私、雛の事が大~好きっ。」
改めて雛に、ギュッて抱き付く。
「だから唯、雛乃はだな?」
再度肩を悠希に掴まれ、何故か額を押さえて、ダメな子を見るように頭を軽く振られた。
ええっ?!何だか、呆れられてるっ?
「大丈夫よ…、御門さん。」
僅かに緊張しつつも、雛は悠希を制する。
そうだよね、雛っ。私、迷惑じゃないよね~っ。
悠希を押し留めてくれた事で、私は雛に抱き付く事を許されたと気を良くする。
そして更に、私より少し背の高い雛へ腕を回したの。




