旧世界の遺物03
「ねぇ、悠希。」
「ん?」
メニュー表を見ていた悠希へ声を掛けると、当たり前に真っ直ぐ私へと視線を向けてくれる。
「何。どうしたの?」
ノンアルコールドリンクをチビチビ飲みながら、声を掛けた私が何も言わないでいると、悠希は小首を傾げて問い返してくる。
うん、やっぱり大型犬みたい。
いやいや、犬は喋らないけど。
「あの話って、どうなってるの?」
私は、町に戻ってくる前に彼と話していた会話を振ってみた。
話してくれないのは、昨日の事だから忘れているのかも、と思っていたけど。
「あ、あれね。………さすがに、ここでは…ね。」
僅かに苦笑を浮かべる悠希。
すぐに何の話か分かったのか、もしくは誤魔化す為なのか。どちらにせよ、この場では話さないらしい。
「そうなの。」
少しガッカリして、私は視線を落とした。
そして、そのタイミングで出された肉料理に手を伸ばす。
「あ~…。雛乃にも聞いてほしいから、彼女が元気になってからでも、良いかな?」
何故か私の頭を撫でながら、悠希がそう告げる。
うん、別に良いんだけど。………何となく嫌。
私の複雑な心境は伝わる事もなく、悠希も食事に手をつけ始めた。
食事処では、様々な人が集まる。
当たり前なんだけど、人が集まれば噂話が囁かれる。
「聞いたか?あの話。」
「あぁ、鉄の塔が崩れたってやつだろ?」
「前々から、いつかは崩れると思ってたけどな…。」
三つ程離れたテーブルのお客さんが話していた。
鉄の塔って、やっぱり…あれ?
私が思い当たるのは、昨日見たばかりの東京タワーだった。
「あ~…、気付いた?」
悠希が僅かな困惑を見せる。
私の動きが止まった事と、背後の客の声が結び付いたんだろう。
「…うん。知ってたの?」
私は聞こえてきた話に戸惑いつつも、彼自身に驚きが見えない事を感じた。
でも、悠希は何も言わない。
ただ、優しく微笑んだだけだった。
もしかしたら、私が欠片を手にしたからかも知れない。
東京タワーという存在そのものを、私がマジックバックに格納してしまったから。
だから、存在意義のなくなっなった東京タワーは、自ら崩壊を選んだのではないか。
…そうだとしたら、大変なんだけどっ。
私達がこれからしようとしている事。それがこの世界からの、旧世界の遺物の排除となってしまうかもしれない。
ど、どうしよう…っ。雛~…っ。




