旧世界の遺物02
「あ~あ…、何にしようかなっ。」
雛を宿に一人にしている事もあって、目の前にたくさん並ぶ商品は、少しも私の心を引かない。
悠希の魔法で雛を浮かせ、宿場町に戻ったのが昨日の夕方。
今朝も雛の熱は下がらず、彼女は絶対安静状態だった。
あのお医者さん、ヤブじゃないよね?
「唯。何か、失礼な事を考えてるんだろ。」
心の中で私がぶうたれていると、悠希のカンが冴え渡る。
「な、何の事かな~?」
あからさまな態度ではあっても、私は視線を宙へ投げる事しか出来なかった。
「ったく、バレバレだっての。医者の言う事を信じろって。文句垂れてるより、美味い飯を食った方が建設的だ。ほら、行くぞっ。」
腕を取られ、少し強引に引っ張って先を歩く悠希。かといって大股で進むのではなく、何気に私の歩調も考えてくれていた。
これはこれで、彼が気を使っているのだと分からなくもない。
なので私もそれに抵抗する事なく、大人しく彼に手を引かれて歩いた。
「あ、あそこ。入るぞ。」
商店が建ち並ぶ道を抜け、少し路地を入った場所にあるお店を顎で示した悠希。
私の同意は求めていないのか、返答を聞く事なく、手を引いたままで店の扉を開ける。
「らっしゃい!」
「ども。二人だけど。」
「はいよ。奥が空いてるよ。」
威勢の良い掛け声の後、テンポ良く奥のテーブルに案内される。
男の人って、こういうところが凄い。
私なら、まず躊躇しちゃうもんね。キョロキョロして、自分で座席を探すし。
「唯、どうしたんだ?」
椅子を引いてくれていた悠希が、不思議そうな視線を向けていた。
何か、紳士的…っ。
「あ、ううん、何でもない。」
咄嗟に笑みを返し、彼の引いてくれた椅子に腰掛ける。
笑って誤魔化したけど、多少引き攣っていたかもしれない。
「好き嫌いはないよな?」
「あ、うん…。」
「適当にお薦め持ってきて?後、ノンアルコールドリンク2つね。」
私に問い掛けたそばから、悠希はすぐに店員さんに注文をする。
慣れてるな~と、感心して彼を観察していた私。
「ん?どうしたんだ、唯。」
「な、何でもないっ。」
急に視線が合い、オタオタしてしまったのは、仕方がない事だと思う。
「そ、か。」
それでも悠希の態度は変わらず、何処か楽しそうにも見えた。
何か、大人だなぁ~…。
二つしか歳が違わないのに、これが13歳と15歳の違いなのかと、少しだけチクリと胸を刺すものがあった。




