旧世界の遺物01
「大丈夫?雛…。」
よほど私が心配そうな顔をしていたのだろう。
苦笑を浮かべつつも、ベッドから雛の手が伸びてきて、頭を撫でられる。
その優しい手に、私が目を細めて和んでいると。
「こらこら、唯。寝込んでる奴から慰められてどうする。」
横からグイッと身体ごと引っ張られ、固いものに押し付けられた。
上から聞こえた声に、それが悠希の肉体だと理解する。
「なっ…っ!」
片腕を後ろから肩ごしに回され、身動きが取れない。
それでも混乱している私は、その腕から逃れようと、思い切りバタバタと暴れた。
「ちょ…?静かにしろって、唯…っ。」
暴れる私を押さえようとしていた悠希だったけど、途端に息を呑んで押し黙まる。かと思うと、急に解放された。
ん?どうしたの?
さすがに心配になり、ソッと後ろを振り返ってみた。
足?あぁ~…もしかしなくても、私が蹴ったのね?
脛を押さえて悶える悠希を見て、私は一人納得する。
「突然女の子を、後ろから羽交い締めにするからだよ。」
危ないところを助けてもらったとはいえ、私にとって彼は初対面。
いや、雛が悠希を知っているから、私も知り合いかも知れないけど…。それにしたって、何年かぶりな訳でしょ?
「…っ。いや、本当に…悪かった。」
脛を擦りながらも、悠希は素直に頭を下げた。
こういう時、変な言い訳をされないのは好印象を受ける。
真摯に向き合ってくれているのだと、安心も出来た。
「うん、許す。」
私は悠希に、ニコッと笑みを向ける。
少し上から目線かも知れないけど、身長差からすると明らかに私が見下されサイズだから、こういう時くらいは良いだろう。
「ははぁ~…、有り難き幸せ…。って、こんなところで良いか?」
「うんっ。悠希、面白い人だね。」
仰々しく頭を下げつつ、少し間を置いてから笑みを見せた悠希。
私は彼の、こんな人当たりが良いところが新鮮だった。
「でも、私と雛の触れ合いを邪魔しちゃダメだよ?」
コテンと小首を傾げて訴えると、悠希は何故か苦笑いを浮かべる。
「悪かったって。けど、雛乃は魔力消耗で熱があるんだから。ちゃんと休ませてやらないと、早く治らないぜ?」
「あ…。」
言われて改めて思い出す。
そうだった。
お医者さんからは、ゆっくり休めば二、三日で良くなるって言われてたよ。
「ご、ごめんね?雛。ゆっくり休んでね~?」
慌てて悠希の背を押しながら、雛に笑顔で手を振った。
雛は静かな笑みを浮かべて、布団の隙間から小さく手を振り返してくれる。
そして私は、半ば強引に悠希と部屋を後にしたのだっだ。




