一つ目の欠片03
「…化け物が…っ。」
歯軋りしながら、元覆面さんから睨まれる。
うわ…、噛み付かれそうなんだけど…。
思わず後退りしちゃったけど、スッと私を守るように、悠希が間に立つ。
「ふぅん。イレーニア・バッティスタって言うんだ。…オレンジがかったセミロングの髪。青緑の瞳。色白の肌。大人しくしていれば守られる側の女性なのに、口悪いからポイントがかなりマイナスだな。」
私を庇うように背後へ隠したまま、どうやら悪い笑みを浮かべてそうな悠希。
後ろからは見えないけど、元覆面さんが舌打ちしたからね。
「もっと暴かれたい?彼女、心の中が読めるんだよね。…でも今ならもれなく、物と交換で解放してあげなくもないぜ?」
楽しそうに告げている悠希の言葉の後、元覆面さんの歯軋りが聞こえた。
うん、悠希…悪者っぽいって。
でも本当に、私は欠片を返してほしいだけなんだ。
「返してっ。」
悠希を盾に、私は彼の背中から顔だけ出して再度、元覆面さんに訴える。
「…くそ魔法使いがっ。……分かったよ、返してやるさっ。」
鋭い視線と共に、吐き捨てられる言葉。
やっぱりこの人、魔法そのものに敵意を持ってる。
既に投げやりになってるけど、もしかしたら魔法を使える人に、何かされた事があるのかもしれない。
「うん、物分かりが良くて助かるな。火山雷ノ魔法…モード土、大地浮遊。」
悠希は再度、既に固まった地面ごと、元覆面さんを空中へ浮かべる。
バラバラと砕け落ちる土だったけど、元覆面さんの胸部から腹部あたりを輪のように取り囲んで、拘束したままだった。
つまりは、この状態で欠片を返すように、って事らしい。
「その腰の革袋?」
「…そうだ。」
宙へ浮かべた元覆面さんを観察して、悠希は奪われた物のありかを当てる。
元覆面さんもこの状態では抵抗しようがなく、私達に向ける鋭い視線はそのままに、素直に答えてくれているようだった。
「罠とか、じゃないよな?」
それでも悠希は警戒を解かず、元覆面さんの腰から革袋を取り外す。
そして私の方へ視線を向けた。
開けて見ても良いかの確認かな?
「良いよ。」
私はそう判断し、悠希に答える。
返答を聞き、悠希が一つ頷いて、革袋の紐を緩めた。
「…これ?」
小首を傾げながら取り出した光る物は、親指と人差し指で輪を作った程の、小さな球体だった。




