一つ目の欠片02
と、とにかく。今は雛をちゃんと休ませてあげないとならない。
「え、えっと…宿までは運べないし…。お医者さんも…、ここに呼べないし…。」
空回りする気持ち。
焦りばかりが溢れて、私は一人でパニックになってしまった。
「落ち着いて、唯。私は、休めば大丈夫だから、ね?」
うっすら涙まで浮かべていた私に、雛はふわりと表情を和らげてくれる。
身体が辛い筈なのに、私の事まで気遣ってくれる優しい雛。
本当に、大好き。
「どうしたんだ?泣いてるのか?」
戻って来ない私を心配したのか、悠希がこちらに歩み寄ってくる。
あ、雛が固まった。
人見知り発動。
「あ、あの…。」
「雛乃か。顔が赤い。熱がありそうだな。」
ワタワタと慌てる私をよそに、悠希はズイッと、横たわる雛に顔を近付ける。
そ、それ以上近付いちゃダメっ。
「おっと、近距離過ぎたな。悪い。」
私の心の声が聞こえた訳じゃないだろうが、悠希は苦笑いを浮かべながら身体を離した。
あれ?…もしかして、雛の人見知りも知ってる?
「後で町まで運んでやるよ。とりあえずその前に、アイツから奪い返さないとならないだろ?」
さらりと告げ、顎で覆面さんを指す。
そ、そうだった。ここまで頑張っておいて、収穫なしって辛すぎ。
「う、うん。雛、ごめんね?ちょっと待ってて?」
悠希の言葉に了承しつつ、私は雛に同意を求めた。
勿論、雛は了承してくれる。
って言うか、無言で何度か頷いてくれただけなんだけど。
私は悠希と一緒に、地面に埋もれる覆面さんに歩み寄る。
だって、一人じゃ怖いもん。
「あ、あの…、光を返してっ。」
恐怖もあって少し吃りつつも、私は手を差し出して覆面さんに告げた。
けど、思い切り無視される。
うぅっ…、挫けそう。けど、早く雛をお医者さんに診せてあげたい。
悠希は何もする気はないのか、今は私の隣で静観しているようだった。
ムムムッと、私は必死に考える。何か、覆面さんに有利になる事はないか。
何か…。………イレーニア・バッティスタ…。ん?
不意に頭に浮かんだそれ。
名前?覆面さんの?
私は思わず周囲を確認する。
「えっと…、イレーニア・バッティスタ…さん?」
私が覆面さんへ向け、疑問系ながらもそれを口にした。
けど、ビンゴ。
明らかに顔色が変わった覆面さん。あ、顔を出してるから、元覆面さんだね。
「イレーニア・バッティスタさん、返して?」
今度は柔らかく言ってみた。
立場的に今の私、元覆面さんより上だもんね。




