捕獲03
「ほ…星ノ魔法、巨蟹宮っ。」
私は星ノ魔法で、大きな蟹を召喚する。
思わず見物に回っていたけど、これって彼が助けに入ってくれたからで…。
「巨蟹宮、お願いっ。あのワイヤーを切れないかなっ?」
もしかしたらと思いながらも、私は大蟹に伝えた。
勿論、彼の者から了承の意思が返ってきたよっ。
「君っ。もう少し頑張ってっ!」
私は男の子に向かって叫ぶ。
ごめん、名前は分からないんだけど。
彼の視線が、苦しそうな色を浮かべながらも、こちらに向けられた。
次の瞬間、僅かに細められたと思ったのは、私の気のせいかな?
そして大蟹の、彼を一刀両断しそうな程大きなハサミが、彼を拘束しているワイヤーを纏めて挟み込む。
バチバチ、ブチッ!
激しい断裂音を響かせながら、合計8本のワイヤーが断たれた。
凄いよ、蟹~っ。
雛の風の防御壁でも壊れなかった、あのワイヤーだよ?
「サンキュ!火山雷ノ魔法…モード雷、放雷っ。」
ワイヤーから解放されると同時に、彼は今までと違った魔法を発動させる。
一瞬、残像が見える程に動きが速くなったから、また驚いちゃった。だって気付いた時には、大蟹が断ち切ったワイヤーを8本全て、その手に持っていたんだもん。
そして、全身からバチバチと空気を弾けさせながら、電気を放つ彼。
当たり前のように、掴んでいるワイヤーから、彼の電気が覆面達に伝わった。
バチバチィ、バチッ!
音と光の大合唱が周囲を青白く照らし、他の全ての音を消し去った。
って…こんな電気を通したら、覆面の人達が死んじゃわない?
思わずそんな心配をした私。
けど、それらの光景から目を逸らさなかったのは、何かを感じていたからなのかな?
「やっぱりな。」
呟かれた彼の声を拾った私は、己の目で見ている事柄が幻かと思いたかった。
未だワイヤーを掴んでいた彼は、クイッとそれを手前に引く。
つられて出てきたのは、真っ黒に焦げた…鉄の塊だった。
「え?…えぇ~っ?!」
私は素で叫ぶ。
だって、さっきまで私達を攻撃してきてた、覆面達だよ?
「あれ、気付いてなかったの?これ、人間じゃないから。」
呆れを含んだ彼の言葉。
知らなかったの?とでも言いたげな、少しだけ驚きを浮かべた視線も同時に向けられる。
いやいや、知らないよ。知る訳ないじゃん。
今この時まで、人形の鉄の塊だなんて、気付かなかったよっ。




