捕獲02
ソッと彼を見上げると、それに気付かれて視線を向けられる。
そして、爽やかに微笑まれた。
うん、やってる事は結構悪なんだけど…何故だか憎めない。
「これでも返す気はないのか?」
再び彼は覆面達に問う。
「わ、分かったっ。か、返すから…っ。」
溺れるように地面の砂を掻く覆面。
けど、何だかおかしい。
私はその違和感に、理由まで思い当たらなくて首を傾げる。
「どうしたのさ、唯。」
「え?あ~…、何か…。」
不意に彼が問い掛けてきて、私は自分の思考の中で気付かなかった。
何でこの人、私の名前を知ってるのだろうか、って事に。
「あ…、分かった。この人以外が、普通なんだ。」
漸く違和感の答えに辿り着いた私。
普通っていう意味は、人間味があるって事かな。
けど、声に出しちゃダメだったみたい。
「チッ、気付きやがった!ヤれっ。」
急に砂で溺れていた覆面が、他の覆面に合図を送る。
すると、砂に半分以上埋もれていた他の覆面が攻撃を繰り出してきた。
ぅきゃ~っ。
しかもなんと、飛んできたのは手首っ。
もう、驚くなって言う方が無理だよ。
「っ!」
即座に、自らが帯びていた剣を盾にする男の子。
私の目の前、数センチの距離で弾かれる手首。
もう、こういう時は気を失ったりしたいよね。怖すぎ。
でも図太いのか、私の神経はそんなに繊細じゃない。
しかも驚きに見開かれた瞳には全てが見えちゃって、何かもう…っ。
「大丈夫かっ?」
心の中で自分に嘆いていた私は、慌てたような彼の言葉に我に返る。
そうだよ、今は現実逃避している場合じゃない。
それによくよく見てみれば、手首は人のそれじゃなかった。
似てはいるけど、明らかに作り物。だって、細い鉄を寄り合わせたワイヤーで繋がっているもん。
彼の細い剣に巻き付くように、その手首はぶら下がっている。
「あ、ありがと…。」
どうにかお礼は告げるけど、心臓はまだ一人でダッシュ中。
でも、ゆっくり休ませてはもらえない。
「この…っ。あの男はヤってしまえっ。」
砂の地面でもがく覆面が、再度他の覆面に指示を出す。
すると残る覆面が、一斉に手首を飛ばしてきた。
いや、だからその攻撃、怖いんだって。
それらの手首は、掌を開いたパーの状態で飛んできて、彼の全身をあちこち掴む。
「くっ!」
肩や足、太股や首などを掴まれて、彼は苦しそうに呻いた。
4掛ける2、合計8個の手首に襲われている。
あ、両手は自分の剣を持っているからなんだけど。その剣は一つの手首を巻いてるから、掴んでいるのは彼の方で…。
とにかく、絶体絶命?逆捕獲だよっ。




