敵襲 03
私の召喚した人馬宮が弓を射る。
だが相手は、鉄を細く寄り合わせたワイヤーで繋がれた、掌サイズの鏃のような金属質の物体を使っているのだ。
強力な筈の、雛の風の防御壁に当たっても砕かれない。そんな強度を持った武器相手に、弓で勝とうとする事自体が無謀かもしれなかった。
幾度も続けざまに人馬から放たれた弓は、覆面に届く手前でことごとく打ち落とされる。
いくら直線的な攻撃しか出来なくとも、弓の放物線を崩せない筈がない。しかも相手は5人組。
「う~っ…、なんか狡いんだけどぉ!」
私は思うようにいかない悔しさに、唇を尖らせて訴える。
対人戦の経験がない訳ではないが、この距離感は異常だ。
ハッキリと相手の顔も黙視出来ない遠さで、通常の武器も魔法も効果がない。
「これは諦めるしかないのかしら。私の回転式拳銃でも、この距離は埋められないわね。」
防御壁を盾に、雛と顔を見合わせた。
私の武器は短剣。雛は回転式拳銃。
とても届く気がしない。
もう、敗退確定なの?
「それでも不思議なのは、相手側が退かない事かしら。」
困り顔から一転、興味を引いたような疑問顔に変化した雛。顎に手をあて小首を傾げながらも、前方を見据えている。
言われて気付いたけど、確かに欠片が目的じゃなかったって事かな?
「手にとって見てる筈だよね、あれ。違ったのかなぁ。」
確認するように問いつつも、私は望遠眼鏡で覆面軍団の様子を伺う。
私達はあの光を、旧世界の欠片だと思って近付いた。
でももし、彼等(?)が思う物と違ったならば。
「…一理あるわね。まだ私達には、あれの形は分からないのだけれど、襲撃者達の思いとは違うと推測出来るかしら。そうでなければ、こうも執拗にこちらを攻撃してこない筈。」
雛の導き出した答え。
確かに目的を成し遂げたならば、早々の撤退を要するのが常套手段だ。
それが成されないのはただ一つ。目的を達成していないから。
「あの覆面軍団さ、何処かで私達の話を聞いたのかな。」
不意に思い浮かんだ。
だって、私達は旅をしてきたんだもの。
何処でだって、いつだって、欠片の話をしなかった日はない。
「あら、困ったわね。」
雛があまり困っていなさそうに、コテンと首を傾げる。
壁に耳あり、障子に目あり。うん、文献で覚えた言葉通りだよ。




