心の声 02
「大丈夫、唯?」
不意に心配そうな雛の声が聞こえる。
あれ?既視感?
私は瞬きを繰り返しながら、現状を把握しようとした。
「…今日は、この宿場町でゆっくりしようかしら。」
頭を撫でられ、私を気遣う雛の優しい手の感触に目を細める。
どうやら雛に夢の話を聞かせている途中で、自分の世界に入ってしまったようだった。
「ありがとう…、ごめんね?」
旅を始めてからずっと、宿場町で一泊するだけの日程である。
ゆっくりと観光する暇がないのは当たり前で、私達は四角錐の塔を真っ直ぐ目指していた。
「大丈夫よ、唯。別に、そこまで急ぐ旅でもないのだから。」
申し訳なさそうな顔をした私の気を軽くしようと、雛は柔らかい微笑みを浮かべている。
確かに急ぐ理由はないけど、でも世界の欠片の数を思えば気が遠くなるのは事実。
しかも、文献に載っているだけが欠片とは限らない。
「でも、数が凄くあるんだよ?」
「問題ないわよ。誰かに依頼をされた訳でもないのだし。気にする事はないわ?それに欠片集めの途中でも、冒険者としての依頼を受ける事もあると思うのよね。手持ちのお金が少なくなったら、心細いでしょ?」
私の心配をよそに、雛は事も無げに告げた。
いつも思うけど、現実的だよね。
うん、お金が大切だとは私も思うんだけどさ。
「そうだね。とりあえず旅が常に宿屋泊だから、その分の出費は嵩むもんね。テントとかあると良いかもだけど…。」
「あるのよ?」
「へ…っ?!」
驚きのあまり、おかしな声を出してしまったじゃないの。
良い閃きだと思っていた私の言葉に、アッサリと返答してくれる雛。
瞬きを繰り返す私に、雛は首を軽く傾げたまま止まっている。
「あるわよ?」
動かない私に、雛が傾げたままの首を、今度は逆側に傾けて同じ内容を告げた。
いやいや、聞こえてるんだよ。聞こえては、ね。
「あの…ね、雛?あるって…何が?」
「勿論、テントよ。マジックバックに、キャンプグッズは一式揃えてあるわ?」
唯は、驚く私を逆に不思議そうに見つめる。
いつの間に…っていうか、一式?
私は雛の腰へ視線を向けた。
よくもまぁ、それだけの物が入るわね。
「どうかしたのかしら?鍋もフライパンも、野菜だってお肉だって入っているもの。」
「す、凄いね…。」
自信満々に告げる雛に、私は一欠片の疑いもない。
だってこのマジックバックは、改造すればするほど好みの品になるのだから。あ、勿論お金はかかるけどね。




