魔物との遭遇 03
「唯、牡牛さんを引かせて良いわよ。」
雛が風の防御壁を安定させ終わったのか、次の魔法の準備を終えている。
言い忘れてた。
前衛が私で、後衛が雛。これが私達の戦闘スタイルなの。
「金牛宮、戻って!ありがとう~っ。」
「風ノ魔法、突風弾。」
私の召喚した牡牛が空気に溶けるように消えた後を見計らって、雛の風の玉の攻撃が放たれ、魔物に命中した。
人の頭くらいの大きさの風の塊が、私のすぐそばを飛んでいったの。
…本当に凄い命中率ね。私なら掠っていたかもよ。
「唯、気を付けて。」
それなのに。
後ろから雛の注意が飛び、私は意識を前方の魔物に移した。
近いっ?!
先程とは桁違いのスピードで、いつの間にか接近してきていた黒い魔物は、その大きさからとても近距離に見える。
「ぅきゃ~っ、霊化ノ魔法、霊化っ!」
避ける事が出来ないと即座に判断した私。
すぐに幽霊のような透明状態になり、魔物との激突を回避した。と言うか、相手が私を通り抜けた。
ズドーンッ!ブシャッ、ビバシャッ!!
激突音と破砕音、炸裂音が続く。
いやぁ~、これ…。絶対に見たくない光景が背後に広がってるよ…。
視線を向けたくない気持ちを制し、私はゆっくりと振り向いた。…うん、見ない方が良かった。
って、説明がいる?
簡単に言うと、さっきの黒デカ魔物が、雛の風の防御壁にぶつかって砕けた。
いやね、光景は凄いのよ。何て言うのか…地面から空中─この場合は雛の風の防御壁─にかけて、垂直に赤黒い中身がビシャー…?
私は幽霊状態に肉体を変化させてるから、その飛び散ったものもすり抜けて、後ろの地面を汚してるんだけどね。
「大丈夫?唯。」
壁の向こうから、雛の心配そうな声が聞こえた。
「あ、大丈夫~。…ほら?」
無事を伝える為、私はフワリと浮遊して壁を上空から乗り越える。
そして雛の視界にとまるように、手を大きく振った。
「…霊化、だったかしら?」
私の能力を知っている雛が、顎に手を当てて思い出すように告げる。
「うんっ。後…、20秒くらい。」
そんな彼女のすぐそばに降り立つと、私は自分の脳内にある、ステータス表示された使用時間を確認した。
この魔法は便利で、100秒という時間制限があるけど、頭の中でカウンターが出るから分かりやすいのよね。
「良かったわ、唯が無事で。でもまさか、本当に魔物が突進してくるとは思わなかったけれど。」
自分の魔法へ勝手にぶつかってきたにしろ、対した魔法は雛の攻撃であった事に間違いないのだ。
それでも彼女は、喜ぶよりも愁いに満ちた表情をする。
優しすぎるけど、そんな雛も私は大好き。




