魔物との遭遇 02
「ぅわ~っ、たくさんいるぅ~。」
思わずげんなりする私。
「やっぱりいるのね?…私には見えないけれど。」
それに反応してくれる雛の視覚情報には、私がうんざりするアレ等は全く映らないようである。
羨ましい限りだ。
「皆、あの魔物に食べられた人達みたい。恨めしいとか憎らしいとか怖いとか、負の感情を延々と訴えてる。」
魔物の動きは遅く、姿は見えるが一向に近付いて来ない。
それでも肉体を持たないアレ等の声は煩いほどで、非常に迷惑な騒音である。
「このまま街道に来られるのは困るわね。魔物避けの結界が壊れてしまうわ。」
「うんっ。とにかく、あの魔物の向きを変えなきゃ。星ノ魔法、召喚…金牛宮。」
顎に手を当てて困り顔の雛。
私は一度首肯すると、星ノ魔法で金牛宮─牛─を召喚した。
これは白黒に似ているけど、実は旧世界の黄道十二宮での2番目。牡牛座にあたる、角のある牛の事である。
旧世界で伝わっていたギリシア神話では、大神ゼウスがエウロパ姫をさらおうとして変身した、雪のように白くて透き通るような角を持つ、優雅な牡牛とされている。
だから私の呼び出す金牛宮も、角のある白い牛の姿をしていた。
「あの魔物の進行方向を変えたいの。お願い、金牛宮っ。」
召喚された牡牛にお願いすると、了承と共に突進するという意思が伝わってくる。
彼の者達は人語を話はしないけど、私は心眼の能力でその意思を理解出来るの。
「私は街道を守るわね。風ノ魔法 、風嵐壁。」
雛が放った魔法は、街道と魔物の間に大きな風の防御壁を作り出した。
この風の壁は、触れれば内からも外からも切り刻まれてしまう、という怖い魔法なの。
でもそれほど強力な魔法を放たなければと思うほど、こちらに向かってくる魔物は凶悪さを滲み出している。
前方の黒々とした魔物に、真っ白な牡牛の召喚獣がぶつかった。
けども対する魔物の大きさは優に3倍はあり、圧倒的にこちらが力不足。
勿論、私の魔力が負けていると言う意味なんだけど。
「っ、金牛宮が押されてるよぉ。」
私の魔法で呼び出されているから、恐らく本来ある彼の者達の能力は、この場においてかなり制限されている筈だった。
本当にゴメンね、頼りない術者で。




