魔物との遭遇 01
私達が住んでいた集落を出て、早十日。
文献の地図を頼りに街道を進み、宿場町を通りながらの旅は順調だった。
「雛、この赤い果実、美味しいねっ。何て言ったっけ…、プレム?」
私は昨日宿泊した宿場町で買った、掌に乗るくらいの可愛い果実を食べながら歩いている。
真ん中に二センチくらいの種が入っているけど、皮ごと食べられて美味しいの。
「プラムよ。けれど、町に寄る度にそうやって食べてばかりいたら、家につく頃には今の三倍くらいになっているかもしれないわね。」
文献から写した簡易的な地図を広げ、雛がチクリと告げた。
…マジですか。
いえ、何が三倍とは言わなかったけど、それって私の体重の事だよね?!
「が~んっ。」
「あら、口をつけたものは食べてくれないと困るわよ?」
手にしたプレム改めプラムをショックのあまり見つめていると、雛が静かに諭してくる。
そうだよね、食べ物を無駄にしてはダメだよね?
でも、袋一杯─安い事を言い訳に、抱える程買ったから─残っている。
生物だし、このままじゃ腐っちゃうかもしれない。そう思って悩んでいると、雛がコテンと頭を倒して告げてきた。
「ジャムやお菓子に加工出来るわよ?それにお酒としても作って売られているわね。」
「へぇ~っ、凄いね、プラム!」
博識な雛の言葉に、私は感心しながら最後の欠片を口へ入れる。
お酒はまだ飲めないけど、お菓子やジャムなら大歓迎だ。
「雛も作れる?食べてみたいっ。」
「えぇ、構わないわ。けれど間食は控えないと身体に悪いから、気を付けてね?」
「はぁ~いっ。」
私の依頼をすぐに了承してくれる雛。
注意もされたけど、これは私の事を思っての言葉だから嫌ではないの。
それよりも、そのまま食べても美味しいプラムが、どの様な甘味になるかの方が興味津々だった。
「あ…、何かいる。」
不意に、感覚へ割り込むように強い欲求が流れてくる。
これは魔物の気配。
魔物は人を食べるもの程強く、体躯が大柄だ。
「この辺りにはまだ、それほど大きな魔物の出現情報はない筈だけれど。」
雛は宿場町に寄る度、冒険者の宿に立ち寄って魔物情報を仕入れている。
冒険者の宿では、近隣地域での魔物情報が壁に張り出してあり、それを元に依頼などを受けるからだ。勿論、その情報は冒険者以外も見る事が出来る。
ちなみに私も雛も、冒険者として小さな依頼を受ける事があった。




