旅立ち 04
「でも、一つだけ問題があるかしら。」
「えっ?!何、何?」
文献の写しを鞄に片付けつつ、事も無げに雛が告げる。
私はその言葉の意味が分からず、混乱してしまう。
問題って事は…、問題よね。
「どうしてそこまで驚いているのかしら。」
何故か、驚いている私に驚いている雛。
いえ…、ねぇ?私は問題がある事に驚いていて…。
「あ、あの…問題って…?」
「あぁ、その事。」
「その事って?!」
予想外に軽く答えられてしまい、余計に焦りを煽られた。
すると突然、クスクスと雛が笑い始める。
あ、あれ?
「ひ、雛?」
唖然としてしまい、私は名を呼ぶ事しか出来ない。
けどこれって、いつもの雛の…あれ?
「あら、それほど驚く事もないわよ。ただ、道中は徒歩になるだけだという事だもの。」
サラリと明かされた、問題点。
そう…、徒歩に…。って、それだけ?
「ひ、雛~っ。」
驚きすぎて、私は再び椅子に腰を落としてしまった。
本当に驚いたよ、心臓に悪い。
大体、そんな事くらい知ってるよ。
この世界には、旧世界にあるような車や電車、勿論飛行機とかも存在しない。
あ、馬車のようなものはある。馬だけじゃなくて、色々な生き物を使うけど。でも、高価。
「どうしたのかしら、唯。」
雛はにっこりと、悪戯が成功した子供のような微笑みを浮かべた。
はい。しっかりと引っ掛かりましたよ、私。
ご期待に答える事が出来て何よりです。
「はぁ~…馬車、あると良いなぁ~。フィアクールとか、ステージコーチなんてあると、旅も楽になるんだけどぉ。」
椅子の背もたれに倒れ込み、大きく息を吐いた。
けれど、この集落にはその様な便利屋さんは来ない。
「そういう辻馬車や駅馬車は、逆に危ないわよ。盗賊に当たる確率が高まるだけではなくて?」
淡々と告げる雛。
はい。それも真実ですけど。
「それはね、ある意味営業妨害だから。全部の旅客輸送業者が盗賊の的じゃないからね?雛ちゃん、怖っ。」
私はだらけていた身体を起こし、大袈裟に身を震わせた。
本当は高額故に使えないだなんて、言えないんだもん。って言うかそんな旅をしていたら、あっという間に破産しちゃうんだよっ。
「そう、残念ね。けれど、決められたアイテムの中でやりくりしていくのは、ゲームみたいで面白いわ?」
ふわりと微笑む雛。
そうでしょう。貴女なら出来ます。
けど、私には無理っ!




