旅立ち 03
家に帰ってきた私達。
「えっと…、下着に着替えに、携帯食料。お父さんとお母さんに手紙も書いたし…もう大丈夫かな。雛はどう~?」
私は鞄の中に荷物を詰め込みつつ、隣の部屋にいると思われる雛に叫ぶ。
「…後は戸締まりの確認かしら。」
寝泊まりしている私達の部屋へ、静かに顔を出した雛。
その背には大きなリュックがあり、準備が整っている事を知らせていた。
「うん、楽しみ~っ。」
「はしゃぎすぎて、怪我だけはしないようにね。」
両頬を押さえて身悶えると、チクリと冷静な雛の声が飛ぶ。
はい、気を付けます。
「まず始めに、何処へ行くかを決めないとならないわよ?」
残るはリビングだけという状態にして、雛が文献の写しをテーブルに広げた。
手早く─いつの間にか─写しを作ってしまっているのが、彼女の凄いところである。
「う~ん、そうだなぁ。あ、この四角錐の塔は?」
私は記された絵から、何となく近くにありそうだし、と安易な考えを元に発言した。
「そこに行くまでに通る森は、結構レベルが高い魔物の生息地ね。けれど迂回していくとなると、かなり遠回りになるから…。」
そう言いながら考え込んでしまう雛。
あぅ…、ごめんなさい。私、良く考えて選択した訳ではないです。
森は魔物避けが弱い為、街道よりも魔物が多く出没するのだ。
「ご、ゴメンね、雛。そこが一番じゃなくても良いよ、全然っ。」
「あら、心配はしていないわよ。唯も私も、魔法の腕は確かなものだわ?慢心するつもりはないけれど、私達二人なら通り抜けられると思うわね。さすがに、そこで何泊もと言われると厳しいけれど。」
慌てて自分の意見を取り下げようとすると、予想外にも雛から押しの言葉を聞く。
彼女は冷静に物事を判断する質だから、私みたいに安易な発言ではないと思われる。
けどそこまで言われる程、自分の魔法が強いとは知らなかった。
「そうなの?私、森の魔物にも勝てるかな?」
再度、安心を求めて雛に問い掛ける。
いや、別に違っても彼女に責任を擦り付けるつもりはないんだけどね。
「えぇ。ただし、慢心はダメよ?焦らず落ち着いていつもの唯の力を出せば、なんだからね?」
「はぁ~いっ!」
元気良く返事をする私。
だって雛に合格点を出されたら、もう何も怖くないって感じがするもの。




