旅立ち 02
「…どうしたの、唯。そんなに驚いた顔をして、また幽霊でも見たの?」
目を見開いている私に、雛は顔の前で手を振ったりしている。
いや、貴女の発言が原因なのですが。
「え…っと、雛?ちょっと聞きたいんだけど、末裔って…何処からそんな根拠が来たのかな。」
再起動を果たした私は、とりあえず分厚い文献を閉じて、深呼吸してから口を開いた。
多分雛の事だから、推測をする為に何らかの導があると思うのよね。
「うん、名字があるからよ?」
またまたサラリと告げてくれる私の親友だ。
名字とは、代々伝えられているその家の名。姓の事だよね。そんな事は知ってる。
でもそんなの、誰にだって…。と思ったところで、不意に冷静になった。
そう。誰にだって家族としての名前はあるけど、そうじゃない。雛の言っている事は、そうじゃないんだ。
思いだそう、私。様々なモノ達からの情報は、何を言っていた?ここにいる人達の情報との違いは?
あ…。
ピカリと閃いた。
「漢字…、和名だね。」
「そうだね、唯。元からここにいるだろう人達は、もう少し発音が難しいかしら。」
雛は気付けた私に、ふわりと微笑んでみせる。
うん。どう考えても、同じ系統でない事は確かだ。
「でも、それだけで?旧世界にも、系統の違う名前はあった筈よ?」
「そうね。でも、そう考えた方が楽しいからよ?」
あ、それが本音ですか?
にこりと微笑んだ雛は、それに何の問題があるのかと言いたげである。
はい、文句はありません。楽しい方が良いのは私も同じで、別に違ったところで支障などある訳もない。
「そうだね、雛。それじゃあ、文献を元に探そうか、旧世界。」
「その前に、色々と準備をしないとならないわね。」
今すぐにでも出発しそうな私に、雛は柔らかな笑顔で告げた。
そ、そうだった。準備してからでないと、何かと大変だよね。
「う、うん。外には魔物もいるし、ちょっとそこまで~の遠足じゃないもんね。」
思わず自分の行動に苦笑いが溢れる。
私達が住んでいる集落からこの文献所までは、保護されている為に魔物は出ない。だがそれ以外の地域では、様々な魔物が出没するのだ。
街道は比較的安全ではあるものの、冒険者が魔物討伐を生業と出来る程には、周囲は危険に溢れていると言っても間違いではなかった。




