いよいよ上陸02
「分かったよ。雛乃にさせる訳にはいかないから、俺がやれば良いんだろ?」
大きく舌打ちをした後、悠希は率先して岩に歩み寄る。
雛が見つけた赤い光のある岩は悠希の背より大きく、横幅も手を繋いでいる私達四人よりも広い。
岩の中程に屈んで人一人潜れるくらいの穴が開いていて、赤い光はその奥にあった。
「何だ、これ。自然物じゃないよな…。」
潜り込んだ悠希が呟く。
繋いだ手を放せない為、私達四人とも屈んで穴の前に並んでいる。
さすがに中へは一人しか入れないけど、悠希の頭越しに少しだけ赤い光が見えた。
「操作出来そうかな。遺跡とかだと、自然物に模した人工物が引き金になっている事が多いんだよね。それが扉だったり、罠だったりもするんだけど。」
ミセランさんは遺跡にも詳しいのか、悠希の肩越しに中を覗き込みながら告げる。
「適当な事言いやがって。罠だったら危ないだろ。」
「君なら大丈夫でしょ。結界が張れるんだから。」
「あぁ、そうかよ。」
サラリと文句を流された悠希は、再度小さく舌打ちをしてから結界を発動させた。
障壁ノ魔法──絶対防御は、ほぼいつもは内緒話用に使っている。しかしながらこれは当たり前に戦闘時に使用可能な魔法で、あらゆる魔法攻撃を防ぐ事が出来る優れものなのだ。
物理攻撃にも一応対応はしているが、何にでも完璧などそうそう存在しない。生体は通り抜けてしまうのだから、殴るなどの肉弾戦に対する防御は不得手だ──と、悠希に聞いた事がある。
話はズレたが、勿論今回の場合は有効である。
万が一この岩場が崩れたとしても、悠希は掠り傷一つ負わないだろう。
「お?」
悠希が中の石みたいな物を色々触っているうち、それを回転させたられたようだ。
カチッと音がしたかと思うと、上の方から地響きが聞こえてくる。
「危なく…ないよね?」
思わず首を縮めて上を仰ぎ見るが、何かが落ちてくる気配はなかった。
「…何か変化があったようだね。潮の流れが変わったよ。」
ミセランさんが海を見て告げる。
確かに、今まで島に打ち付けるように渦巻いていた波が、この岩の上辺りから割れているように見えた。
「行くか。一定時間だけかもしれないから、のんびりしてはいられないしな。」
穴から出てきた悠希は、そんな海面を見てからニッと笑みを浮かべる。
「そうだね。でも、この仕掛けをどうやって私達以外の人が解除するんだろうね?」
素朴な疑問だった。
これが島に入る唯一の仕掛けなのだとしたら、皆が海に潜れなければならない。──しかも、この深さまで。
どれだけの常人にそれが可能なのだろうか。




