接近しようにも04
あの後冒険者の宿でしっかりを身体を休めた私達は、日の出前に海岸線にやって来ていた。
「やぁ、早いね。皆、体調はどうかな?」
少し遅れてミセランさんが到着する。
大きめのマジックバックを背中に装備していて、両手には籠手。全身は軽度の鎧を纏っていた。
格闘士と言っていたから、これが彼の戦闘スタイルに合っているのだろう。
「おはようございます、ミセランさん。私達はバッチリ元気ですよっ。」
彼が来た途端に不機嫌丸出しになった悠希と、私の背中に隠れ気味の雛。
社交的には見えない仲間の代わりに、私は元気良く挨拶する。
「うん、おはよう唯ちゃん。悠希君と雛乃ちゃんもおはよう。さて、準備が整っているようだから早速出発しようか。」
「うん!」
状況が分かっているミセランさんは深くは追求せず、私達に向けて手を差し出した。
一瞬疑問符が頭に浮かぶも、昨日の条件を思い出してその手を取る。もう片方は雛に向けた。
「大丈夫そうだね。では、圧力ノ魔法…水圧。同じく、重力場。」
小さく苦笑を浮かべるミセランさんのもう片方の手には、不機嫌な顔の悠希がいる。
ムスッとして、子供みたい。
それでもミセランさんは仕事と割り切っているのか、手を繋いだ私達を確認してから魔法を発動させた。
全員の周囲を取り囲むように、淡い水色の光が包み込む。
「さあ、出発だよ?」
ミセランさんの声と共に一斉に足を踏み出した。
そうして私達は、ジャバジャバと海に入っていく。
ハッキリ言って、不思議な感覚だった。
そして水の中にいるのに、身体が濡れる事はない。
「不思議…っ。」
思わず口を開き、またまた驚いた。
普通に喋れるのである。勿論息も普通に出来るし、身体も重くない。自分達の周囲に、極薄の膜があるみたいだった。
「会話も問題なく出来るよ?まぁ俺達冒険者は、喋れないと魔法が使えないから必須条件なんだけどね。」
ニッコリ微笑んでくるミセランさん。
確かに、私達の魔法は詠唱が必要である。
「あっ、魚っ!見て、雛。綺麗な魚がいっぱい~。」
「そうね。マジックバックに入れておいたら、新鮮な魚が食べられそうね。」
私の言いたい事が分かったのか、雛は同じ様に魚を目で追ってくれていた。
「楽しそうだね、唯ちゃんと雛乃ちゃん。でも、手は放したらダメだからね?」
ミセランさんはそんな私達に微笑みながら、しっかりと釘を刺してくる。
分かってるよ、本当に。もう結構深いところに来ているから、ここからいきなり海中遊泳なんてしたくないもんね。




