接近しようにも02
「それ、重要な条件なの?」
硬直した悠希に代わり、私はミセランさんに問い掛ける。
「うん、戸惑うのも分かるんだけどね。俺が海に入る為に使う魔法は基本的に二つ。自分一人なら問題ないんだけど、他者がいる場合には魔法効果を共有する為に必要条件が出てくる。」
「それが、手を繋ぐ事だってのかよ。」
「うん。」
悠希の問いに何でもない事のように首肯するミセランさんだが、表情に苦いものが浮かんでいる気がした。
「もし、手が離れたらどうなるの?」
「…皆で海中遊泳かな。」
簡単そうに答えたミセランさん。
だけどそれって、生死が掛かった体験だよね?
「俺の魔法を使えば、この四人が手を繋ぐ事で海中に入れる。けれど少しでも…一人でも手を放せば、全員が魔法の効果を失うんだ。」
再度分かりやすく告げられ、私達は互いに視線を合わせる。
これって、物凄く大切な条件なんじゃない?
「一人でも、なのね。」
「うん、そう。これは経験済みだから、冗談でも誇張でもない。たまたまその時は水深が浅くて、慌てていても海面に浮上する事は出来たけどね。あ、言い忘れてた。俺の魔法で海に入っても、海底を歩いていく形になるから。もう一つの魔法で移動速度を早めはするから、そこだけはゴメンね。」
呟いた私に頷き返し、ミセランさんは追加情報を告げた。
水深の深い場所でいきなり海に放り出されれば、その水圧だけで押し潰されてしまうだろう。確かに、これはミセランさんにとっての安全に深く関わる事でもあった。
特にこの信頼関係の薄い即席パーティーでは尚更である。
「悠希。」
私は心配になり、横の悠希に視線を向けた。
さすがにここで否はないだろう。
「…分かってるよ。条件を呑む。俺は悠希。」
「私は唯。こっちは…。」
「雛乃です。」
まだむくれてはいるが、悠希が漸く歩み寄りを見せる。私はそれに笑顔を返し、ミセランさんに名乗った。
雛の紹介をしようとしたら物凄く小声だったけど自分から名乗る事が出来たので、私は彼女を思い切り抱き締める。
まだ人見知り発動中なのに、立派だぞ!
「ありがとう、悠希くん。そして唯ちゃんと雛乃ちゃんだね。俺への依頼は、イエヴァに向かう往復の補助って事で良いのかな?」
「うん、それでお願いっ。島の中で私達は別行動をさせてもらうけど、逆に帰りまで放置でも良いかな?」
都合の良い事を言っている自覚はあるけど、私は両手を顔の前で合わせてお願いポーズをした。
島で私達はモアイ像を探して、世界の欠片を手に入れなければならない。ついてこられては色々と面倒なのだ。
「うん、問題ないよ。俺は一人で散策させてもらうから。…あ、絶対に後をついていかないって約束する。」
空気の読めるミセランさんは、こちら側の意図を正確に読み取っている。
良かったぁ。とりあえず本当に悪い人ではないみたい。




