接近しようにも01
「ふうん…。」
「ちょっと、悠希。さっきから態度、超悪いんだけどっ。」
余りの態度に、私はついに悠希を怒鳴る。
ミセランさんが折角良い話を振ってくれてるのに、聞く耳を持たないどころか喧嘩腰なんだもん。
「だってよぉ…。」
「だってじゃないのっ。冒険者の宿で、同じ冒険者相手に喧嘩売ってどうするの?バカなの?」
唇を尖らせる悠希に、私は更に攻撃した。
「ま、まぁまぁ。彼も色々考えがあるんだろうから、ね?」
けれど逆にミセランさんに私が宥められる。
何なの、私が悪いの?
「唯。」
ムッとする私だったけど、横から雛に服の裾を引かれて小声で諭された。
うん、分かってる。落ち着けって事でしょ?
腑に落ちないけど、ここは大人対応が求められている。
私は大きく深呼吸をして無理矢理不条理を呑み込んだ。
「分かったよ。」
「ゴメン、何か…俺のせいっだ!」
漸く私が苛立ちを呑み込んだところで、今更ながらに悠希が謝罪してくる。勿論最後まで言わせる事なく、横から太股の辺りをつねってやった。
語尾が異常に強くなったのは、その為である。
「…あ~、続きを話しても良いかな?」
「はい、どうぞ。」
苦笑いを浮かべたミセランさんに、私は笑顔で首肯する。
決して隣から恨めしそうな視線を向けてこられる意味を知らないとばかりに、だ。
「さっき俺は、イエヴァに行けると答えたよね。でも、これには条件があるんだ。」
何事もなかったかのように話の路線を戻してくる辺り、かなり上級者のようだ。
しかし、内容には少し小首を傾げてしまう。
「条件?」
「うん、条件だね。申し訳ないんだけどこれは俺の安全にも関わってくるから、受け入れられないならこの件はなしにしてもらうよ。」
問い直した私に、再度同じ言葉で受け答えをされる。
「内容が分からない条件に、誰が頷けるってんだよ。」
再び不穏な空気を発する悠希。
けれど、これには私も賛成だ。安易に不明な条件を呑む人なんていない筈。
「はははっ、大丈夫だよ。君達にとって不利益な事はしない。これは誓って言える。」
「だから、内容を教えてくれなきゃ話にならんっての。」
更に食って掛かる悠希。
どちらかというと、ミセランさんは友好的な態度を崩してはいないのだ。
「あ、それは君次第?っていうか、主に君が問題じゃないかと。」
「はあっ?」
「俺と手を繋げる?」
「っ?!」
思わずといった感じで立ち上がった悠希に対し、少しも怯む事なく告げられた言葉。
まぁ、それは混乱するよね。分かるよ。
物凄い大変な事かと思えば、手を繋ぐ事だって。
何、それ。




