海の向こうなんて05
「あぁ、これはここでの俺の売り文句だから心配しないでね。受付では有名で、海に関する仕事を優先的に振り分けてもらってる。」
驚く私達に、ミセランさんはにこやかな笑顔を浮かべる。
「海の関連でお困りならこのミセラン・サートに御用命あれ。」
胸に手を当て、座っている状態なのにまるで騎士のようだ。
うん、気障だよね。
「で、どうする?」
「そうだね。嘘を言っている訳でもなさそうだし、とりあえず話してみる?」
悠希の問い掛けに、私は一先ず信用してみようと思った。
そして私の言葉に、悠希と雛が首肯する事で同意する。
勿論全部は話さないけど。
「良かった。これで俺の事を仮とは言え、仲間として認めてもらった訳だね。」
「仮、だがな。」
笑顔を炸裂させるミセランさんに、悠希が冷たく言い放った。
それでもミセランさんは大人対応で、少し苦笑いをしただけである。
そして漸く私達四人の作戦会議となった。
と言っても、海を渡る事が出来れば問題ない訳で。
「私達、海の向こうの島に行きたいの。」
「俺達がアンタに依頼したい事は、船乗り達が挙って拒否する孤島への往復。」
私の言葉に続けるように、悠希が告げる。
まるで私に話させたくないみたいで、何だかちょっと嫌な感じ。
「孤島?もしかして、イエヴァに行きたいのか?」
「…そうですわ。」
酷く驚いた表情をしてみせるミセランさんに、今まで私の影のように押し黙っていた雛が答えた。
「ビックリした…っ。口が利けないと思っていたが、話せるのか。良かった、俺が怖いだけなんだね。」
超人見知りの雛の心情を察したミセランさんは、柔らかく微笑みかけるだけでそれ以上追求する事はない。
何だか、少しポイント上昇ね。
「それで、イエヴァに何しに…あ、これ以上はダメなんだね。」
目的地以上の事を問おうとして、悠希の視線が更に鋭くなったのを逸早く察するミセランさん。
空気を読むのが非常に巧い。軽く両手を上げて苦笑いした。
「えっと、船でイエヴァに行くのは確かに危険だね。あの周りは海底から切り立った岩が無数にあって、そのせいで海も荒れるんだ。」
「船乗り達が言ってたから知ってる。それで、アンタは行けるのか?」
ミセランさんは危険の意味を噛み砕いて説明してくれているのだが、それすらも悠希には苛立ちの原因のようである。
「うん、行けるよ。」
若干の苦笑いの後、ミセランさんはハッキリと答えた。
それに悠希が軽く目を見開いたのは、私も─たぶん、雛も見てる。
本当に、素直じゃないんだから。




