海の向こうなんて04
「あれ?ご、ゴメン、違ってた?」
鋭い視線を悠希から向けられ、戸惑ったように眉を八の字に下げるミセランさん。
「あの、海の依頼ばかり探しているみたいだったし…。それに、波打ち際じゃなくって、みたいな話だったでしょ?」
何も答えない私達に、ミセランさんは自分の見解にいたった経緯を答えているようだ。
確かに間違ってはいないし、実際にその通りである。ただ私達が必要以上に情報流出を警戒しているだけであって、掲示板の前で話していた私達にこの場合は非があるだろう。
「ごめんなさい。知らない人から声を掛けられて、怖かったからなの。」
私は素直にミセランさんに謝罪する。
隣に立つ悠希からしてみれば、何で謝るんだって思われているんだろうけど。
必要以上に周囲に喧嘩を売ってはいけない。目立ちすぎてはいけないの。
「良いよ、お嬢さん。俺の方こそ、突然間に入って悪かったね。でもこれでお互い様って事で、少し俺の話を聞いてくれるかな?」
爽やか笑顔を惜し気もなく披露してくるミセランさんに、悠希の警戒心は少しも和らがない。勿論、雛は私の後ろで固まっていた。
うん、ここは私しかまともに会話を成立させられる者がいないのね。
「うん、分かったわ。皆も、少しこの人の話を聞く時間を私にくれるかな?」
「…分かった。」
軽く小首を傾げるようにして、私は悠希と雛に問う。勿論、答えは是。
雛は小さく頷いただけだけどね。
「ありがとう、みんな。」
再び爽やか笑顔を浮かべたミセランさんだけど、悠希から鋭い視線を返され、雛からは顔すら合わせられないという結果に終わった。
はい、残念。
そのまま私達は奥の一室を借りる。
本当は良く知りもしない人と密室に入るのが得策ではないと分かっているけど、情報を守る為に結界を発動させる必要があったからだ。
「ふう~ん、結界まで張るんだ。余程周囲を警戒しているんだね。あ、俺は大丈夫。上位の冒険者として、機密事項の保持義務は十分過ぎる程に分かっているからね。」
右手を軽く上げ、宣誓するように告げるミセランさん。
って、自分から上位の冒険者って言ったよ。
「では、君達が海に行きたいのだろうと判断した俺からの提案。俺は魔法で海を渡る事が出来る。」
ミセランさんは詳細を何一つ告げない私達に嫌な顔をせず、自らの能力を一つ公開した。
「な…っ。」
「えっ?」
突然の事に驚く私達。
当たり前だけど、個人の能力は生死を別ける事もある超重要マル秘個人情報である。
それを悠希の結界で他の人に聞こえないにしても、私達三人に惜し気もなく曝したのだ。
2017,01,11文章修正。




