海の向こうなんて01
ザバーンと海岸に打ち寄せる波。
そう今、目の前には海が広がっている。
「なぁ…。本当にこの向こうか?どうやって行くんだよ。」
「文献によるとそのようね。泳ぐという手段は却下したいところよね。」
「遠い、ねぇ。向こうが見えないし。…魔法で行くにも限度があるよね、やっぱり。」
三人が三様の感想を告げた。
「まぁ、素直に船でも借りてくるしかないだろうな。」
「あるの?」
「あるだろ、何処かには。」
悠希の楽観的思考に、私が胡乱な目を向ける。
そりゃ、何処かにはあるでしょうけどねっ。
「この近くに、小さいけれど町があるわね。そこでお願いすれば、船を出してもらえるのではないかしら?」
不毛な問い掛けをしていた悠希と私とは違い、雛は地図から現在地と目的地を比べた上での答えを出してきた。
さすが、雛。こんな波打ち際で悠希と口論しているよりも、確実に前進の道を探してくれる。
「うん、そうしよう!」
「ちぇっ、俺の言葉には素直に頷かないのによぉ。」
笑顔で賛成する私に、悠希が不満げに眉根を寄せていた。
言っている事が同じ様でも、確実かどうかが問題なのである。適当な意見は賛同し難くて当たり前だ。
「そんなところで拗ねたって、誰も慰めてくれないんだよ~。」
既に町方向へ足を向けていた私は、水平線の向こう側を睨んでいる悠希に声を掛ける。雛は地図を見ながら最短ルートを模索中で、ついてこない悠希に気付いていないようだ。
「うっせぇな、唯のくせにっ。」
「何よ、ケンカ売る気っ?」
二人して牙を剥く。
「とにかく、先に何か作ろうかしら。お腹が空いていては、纏まる考えも纏まらないものね。御門さん。こちらで結界をお願いしても良いかしら。唯は準備を手伝ってくれる?」
そこでも雛の大人対応である。
レベルの低いいがみ合いをしている悠希と私に、分かりやすく単純な指示を出してきた。勿論、食べ物にありつけるとあって二人共異論はない。
「分かったぜ、雛乃。」
「うん、雛。手伝うよ~。」
雛は浜辺から少し離れ、短い草のはえている場所にテーブルを出す。そして悠希はいつものように障壁ノ魔法で絶対防御を発動させた。
もう当たり前になった結界だが、これのお陰か今のところ科学者に出会ってはいない。いつまで平穏であるのかは分からないが。
誤字修正2016,01,04




