いきなり戦闘で01
「っ!唯、そっちに行ったぞっ。火山雷ノ魔法、モード炎…火炎咆哮っ。」
「分かってるっ。星ノ魔法、召喚…天秤宮。魔物の動きを止めてほしいのっ。」
悠希が口から炎を吐き、目の前に立ち塞がる複数の魔物を焼き尽くす。そして私は天秤を喚び出した。
これは旧世界のギリシャ神話で、正義と均衡の神アストライアの持っていた天秤とされている。私はそれを利用し、重力制御で数体の魔物を地面へと押し潰した。
「御門さん、危ないわ。風ノ魔法 …破消風。」
背後から悠希に飛び掛かろうとしていた魔物に対して、雛が風の波動でダメージを与えながら吹き飛ばす。
「ありがとな、雛乃っ。」
「あっ、天秤宮っ。」
悠希と雛のやり取りにホンワカした次の瞬間、私は周囲を取り囲む程の新たな魔物の群れに天秤に向かって叫ぶ。
今私達は低木森林を進行中だった。
悠希の背丈程の樹木が密集している場所で、この森の奥にある川で発光石採集の依頼をこなすつもりだったのである。
比較的簡単な依頼だった筈。それが実際に来てみれば、有り得ない程の数の魔物の群れに遭遇中なのだ。
心眼を通じて天秤から可能である返答と、大量の魔力を吸い取られる。それ程に大きな力が必要だった。
私は魔法特性上、接近戦の悠希と近距離戦の雛が戦闘中である背後に立ち、星ノ魔法の召喚で呼び出した彼の者達に指示する形である。だからこそ周囲が良く見えている為、仲間が反応しきれない敵に対して対応するのだ。
だが今回は条件が良くない。視界に木々がある為に見通しが悪く、背の高い悠希が一番不利な状況だった。
合わせて魔物の群れが発生。殲滅しなければ、こちらが全滅の危機的な状態だったのである。
そうして私の行った周囲の木々を巻き込んだ大規模な重力制御により、低木森林にポッカリと円形のハゲが出来上がる。自分達の手の届く範囲は無事なものの、周囲の見晴らしが格段に良くなる程に全てが大地に押し潰されて殲滅されてしまった。
そして私は大量の魔力消耗により、その場に倒れる。
意識が消える時、さっきまで頑張ってくれていた天秤から心配する気配が心眼を通して伝わってきた。
ゴメンね、逆に心配掛けちゃって。




