呼応 02
「…誰か来たぞ?」
「そうね。」
悠希の訝しげな声に、おっとりと雛が答えてる。
私は箱を下ろして思い切り手を振って、そして気付いた。
これ─借り物に対して失礼─って、私じゃなかった、と。
「ごめん、ちょっと待っててね。」
私は憑依した男の人のまま、悠希達に声を掛ける。
知らない人の顔で、知らない人の声で言われても怖いだけだろうけどね。
案の定、悠希からは不審物扱いだった。
とりあえず、この人がここに戻って来ないように、そのまま走って戻る。
これは私が走るから、 実際に疲れる。だけど憑依をといてしまえば、肉体的な疲労は彼のものだからね。
ちょっとだけ、私得な感じで良いよね?
かなり走って息が切れたけど、目の前に自由の女神像が見える場所までやって来た。
ここからなら、たぶん一人でも帰れるでしょ。
私はそう判断すると、スッと憑依を解いて科学者から離れる。その後の私は霊的な存在だから、浮遊しながら本体に合流。
あ、身体を借りた科学者の人は、自分に戻ってキョロキョロしてた。うん、問題なし。
「ジャジャーン!」
そして私本来の肉体に魂を戻し、箱の中からビックリ箱よろしく飛び出した。
「ぅおっ!?な…、唯?!」
良い感じのリアクションで返してくれたのは、勿論悠希。
雛は相変わらず、分かってたわよ的な微笑ましい表情で受け入れてくれる。うん、少しだけ悲しいかも。
「お、お前っ!何してんだよ、バカかっ!」
「バカじゃないもんっ、悠希のバカっ!」
驚かされた事もあってか、思わず反射的に罵ってきた悠希だ。
勿論、私もそれにゼロタイムで返しちゃう。
「落ち着いて、二人とも。御門さんは、唯の事を心配してくれていたのよね。唯は、少しオチャメが過ぎたみたいね。」
間を取り持つ雛に、まぁまぁと宥められた。
私だって分かってるよ、勿論。けど、先にバカって言ってきたのは悠希だもん。
「~~~っ…、無事で良かった。」
「っ?!な、何…、逆に怖いよ。」
「んだとっ!?」
言いたい言葉を飲み込んだようにして、悠希から無事を安堵された。
けど、素直じゃない私は、身体を抱き締めるように言い返す。本当は少し…、少しだけドキッてしたけど、そんな事は言ってあげない。
「ほら、御門さん。すぐにカッとするのは、唯相手では逆効果よ?」
「~~~っ、チッ。」
耳元で小さく雛が悠希に告げ、私には良く分からないけど、舌打ちされた。
何なのよ、いったい。




