欠片の使い方05
「…意欲があって宜しい。頼んだぞ。」
「はいっ。」
上司から正式に依頼を受け、私は元気に返事をした。
よ、良かったぁ…。
内心では胸を撫で下ろしながら、隣の科学者を見る。
彼は困惑したような顔をしていたが、上司が退室した後に大きく息を吐いた。
あれ…溜め息?もしかして、呆れてっ?
私は自分の行動が正しかったのかも分からず、同僚らしき科学者の反応を伺ってしまう。
「凄いな、お前。あの人の言葉に、すぐに反応出来るなんてな。」
「え、集荷の準備だから、簡単だと思って…。」
酷く感慨深げに言われたので、私も戸惑いを隠せずに答えた。
上司、なんだよね?っていうか、間違ってはいなかったみたい?
「…あの人は怖くて有名だから、皆が失敗を恐れて、なかなか命令に即座に対応が出来ないのにな。」
何度も頷きながら告げられた同僚科学者の言葉に、私は困惑してしまう。
そんなに怖い人の命令を、簡単に受けてしまった私?─っていうか、この身体の持ち主、後々大丈夫?
「いや、良いんだけど。渋って受ける方が、後で都合悪いからさ。」
苦笑する同僚科学者。
どうやらこの人達は、かなり立場が下の方らしい。つまりは、反論出来ないって事だね。
そんな人の身体を、勝手に拝借している私。
まぁ、後で上手くやっておいてね─としか言えないけど。
私はその場で、曖昧な笑みを返すだけにする。
どんな人でも、立場が変わればその行動も変えざるを得ないのだから。
「じゃあ…。」
「あぁ、行ってきな。」
この場を去ろうと、同僚科学者に向き合う。すると、親しげな笑みを返された。
本当にこの人達、仲が良いんだろうな。─ごめんね、騙すような事をしちゃって。
私は少しの罪悪感を感じながらも、早々に備品庫へ向かう事にした。
のんびりしていたら、さっきの上司が怒って来ないとも限らない。─自分の身体も心配だし。
って事で、少し早足気味に戻って来ました、備品庫。
でも、扉を開けようとしたところで気付く。
「あ…、鍵が掛かってる。」
自分の口から出た予想以上の低い声に驚きつつも、少し考えれば分かるような事に呆れもした。
仕方なく先程までいた部屋に戻り、鍵の場所を聞く事にする。
「あの…。」
扉を開け、問い掛けようとしたのだが。
怖いとの評価をされていた上司と同僚科学者の、何だか真剣な顔に言葉が止まる。
何の話をしているの?
思わずその場に立ち止まり、聞く体勢になってしまった。
「やはりフォールス・フラグメントでは、世界が安定しないようだな。」
「はい。幾度かパターンを変えてフラグメントを作っていますが、安定させるにはまだ別の要素が必要かと思われます。」
何の…話?
私は衝立の前で立ち止まっている。
でも私のこれ、明らかに盗み聞きの体勢だよね。




