欠片の使い方04
勿論、魂の抜けた私の身体は、くたりと力なく倒れてしまうんだけどね。
私は倒れて怪我をしないように、予めその場に座って、身体を固定しておく事を忘れてない。
前にそれで怪我をしたんだろ─だなんて、誰も突っ込んじゃダメだよ?
ともあれ、私は目標の男の人の魂を追い出し、今は自分の身体となった両手を広げてみる。
「よし…。」
思わず声が出た。
あ、やっちゃった…?
「どうしたんだ?」
その時、隣にいた別の科学者が話し掛けてくる。
ぅわ~っ。ど、どうしようっ。
見た目は変わらないのだから、そんなに焦る必要はないんだけど、やっぱりドキドキするじゃない?
「あ…、えっと…。」
「何だ、疲れてるのか?」
変に会話から疑いを持たれないよう、対応に困っていた私。
不安に思っていたのだが、その科学者はこの身体の人と仲が良いようで、笑顔を浮かべながら肩に手を回してきた。
いや~っ。私の身体じゃないんだけど、触らないでっ。
今は、感触などの感覚は全て私の物なので、突然知らない男の人に肩を抱かれた恐怖心に襲われる。
「っ…、大丈、夫…。」
何とか感情を抑え、言葉を返す私。
「何だ?あ、そうか。お前、昼飯まだだったしな?」
そんな私の気持ちを知る筈もなく、その科学者はにこやかに同意を求めてきた。
もう、放っておいてほしいんだけど。
「そう、だったな…。」
「あぁ、なんだ。キリがついたなら、今から行ってきたらどうだ?」
私の返答に疑問を抱いた様子もなく、親しげに提案してくる。
あ、それは良いね!
「分かった、そうする。」
「俺も昼飯まだだな。一緒に行こうか。」
迷う事なく同意したのだが、その科学者も同行を申し出て来た。
えっ、それは困るんだけど…。
私はここから離れて、早く自分の身体を安全な場所に運びたいんだってば。
「そ、そうだな…。」
しかしながら相手に嫌とは言えず、了承するしかない状況だった。
困ったなぁ…。
内心、そんな事を思っていると。
「あ、おい。ちょうど良いところにいた。」
「はいっ、何でしょうか。」
声を掛けられ、同時に急に畏まったその科学者。
どうやら、彼等の上司にあたる人らしい。
「備品庫の荷物を、配送車が来る前に外に出しておいてほしいのだが。」
その年嵩の男性は、私─じゃない、この身体の持ち主─ともう一人の科学者に、集荷の準備をするように命じてきた。
や、ちょっと待って!備品庫って、私の本体がいる所じゃないっ?
「自分が行きますっ。」
思わず、勢い良く答える。
あ…、しまった…?
一瞬の間が空き、酷く焦った。
二人の科学者の視線が向けられる。
ごめん、そんなに見られると困るんだけど…。
誤字修正(2016,05,10)




