欠片の使い方03
壁をすり抜けて部屋に入った途端、私の身体が実体化した。
「あっぶなかった~…。」
胸に手を当て、大きく息を吐く。
もし壁の途中で実体化したら、とても危険な状況だったのだ。
「時間ギリギリでの、壁のすり抜けは…やめよう、絶対に…っ。」
私は今回の事で、注意事項を頭に刻む。
ふぅ。後は…、ここからどう出るかなんだよね。
落ち着いた私は、次の行動プランを練る事にした。
現在地は敵の真っ只中。勿論、味方はいない。
えっと…、ここは地下2階だから…。
地上階まで、階段を上って脱出しなくてはならない。となると、明らかに生身での脱出は不可能だ。
いくらなんでも、関係者ではない私がテクテクと歩いていたら見付かる。っていうか、捕まる。
そうだなぁ…、やっぱりこれしかないか。
「心眼。」
私は意識を集中し、周囲の気配を探った。
目標は…いる。上の階にも、勿論この階にも。
これは便利だけども難点もある。
全方位の視界が確保されると同時に、心の声までも聞こえてくるの。
それと、幽霊も見える…んだけど、見えないフリ…。
だって、こういう場合の幽霊って、グロテスク─流血、肉体の欠損などなど─なんだもんっ。
「あ~あ、今日も帰りが遅くなるなぁ。」
「お腹空いた…。」
「この法則で行くと……あ、これか?」
大きな独り言を話す、集団の輪にいるようだった。
うるさい…けど、この中で使えそうな人を捜さなくちゃ。
私は感じ取れる範囲で、身体の大きな人を捜す。
けど、基本的に科学者って線が細いんだよね。もっと身体を動かした方が健康的だよ。
「…だって?」
「あぁ。世界を構成する力を有しているらしい。」
「それで、世界を作るって言ってたんだぁ。」
廊下を通り掛かる二人の科学者達の会話が聞こえた。
ダメだよぉ?そんなに大きな声で話してたら。何処で誰が聞いてるか、分からないんだぞぉ?
…なんて心の中で脅してみても、彼等に聞こえる筈もない。いやいや、聞こえたら困るけど。
それにここは彼等の拠点なのだから、誰に聞かれても問題ないとの判断かもしれない。
それでもここに、部外者の唯ちゃんがいますよ~。
この備品庫のような少し埃臭い部屋で、潜入調査中なの私だよん。
って、誰かに聞かれてたら、それはそれで私が困るんだけどね。
そして私は、再度周囲に意識を向けた。
さてと、あの少し背の高い人の身体を借りようかな。
科学者の割りには、身体が大きい男の人を発見する。
あ、どうして身体が大きい人を選出しているのかというと、勿論理由があるんだよ。
「霊化ノ魔法、憑依。」
私は憑依の魔法で、目標にした男の人に乗り移る。
そう、これは魂の移動なのだっ。




