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ズレ

 ねじ込んだ僕の体を避けるイボの壁。

 この冷えた体がどれだけ持つのか不安だが、そもそも日の陰らない地上でもほとんど体温の変化を起こさないこの鉄骨人の体なら地球上の人間よりは長く保てるはずだ。

 それでも、いつ何をきっかけにここが動き出すかわからないと思うと自然と足が速くなる。

 振り返ってみると、僕が行き過ぎたところの壁が再び閉じるということはないようだ。つまり道標なしにあの部屋まで戻ることはできそうだということか。

 ならばと僕は後ろを振り返らずに早足のまま進み、例の三叉路まで戻ってきた。

 三叉路の手前の空間は閉ざされていない。主に道といえる部分だけが閉ざされているようだ。

 何かあればここに避難することもできるかもしれない。

 あの部屋に戻る以外安地はないと思っていた僕は少し安堵した。

 八方塞がり、四面楚歌、そんな囲まれて絶体絶命みたいな状況は色々言葉として残されているが、それで手詰まりというわけではないのだ。なにせそれは生還者の言葉なのだから。

 僕は分かれ道を左に折れ、三叉路は右の道へと入る。

 入る、とはいってもそこは壁が敷き詰められていて、左右の壁の切れ目しか見えていないのだが。

 いざ進むと、それを歓迎せんとばかりに左右に壁が退け僕に道を譲ってくれる。

 降りてすぐは下りだったものの、その後は上がったり下がったりで僕はもう高いところにいるのか低いところにいるのかわからない。内視鏡の気持ちを理解できる人間は唯一僕だけだろう。

 そうして道を進み続けるが、行き止まりもなければ開けた場所もなく、モンスターさえも出ない。

 僕はこの状況を退屈だと言えるほど成熟しているわけではないが、それでも。

 退屈だ。

 そういえば、僕をここに引きずり込んだあの触手は何だったんだろうか。

 あの後、すぐに僕の前にマイクの男が現れたためにそれを気にすることを忘れていた。

 花林の触手か、それとも潜むモンスターの触手の二つくらいが考えられることだが、なぜ出てこないのだろうか。僕が冷えているからか、それとも好機を伺っているのか。

 なんにせよ今思えばあれが一番花の卵に近い存在かもしれない。


「あれ……?」


 進んできた道の先が開いている。かといってそこが未知の分かれ目の広場というわけでもなさそうだ。

 T字路の縦の部分を僕が進んでいる道だとすると、既に開かれている道は横の部分に当る。

 そういう脇道から僕はやってきたはずなのに、目の前に道が開けているということは、誰かが通ったということだ。

 そもそも全てが塞がれていたのかという疑問は残るが。

 どちらから来てどちらへ向かったのだろうか。僕は左右を見比べるが、当然そんなのわかりっこない。


「人か、モンスターか……。もしかして、ヤマトさんが?」


 僕の後を追ってヤマトがここに入ってきたということはないだろうか。

 だとすれば、他にもあの半球体があったということになる。

 それなら今地上はどうなっているんだ。

 そこで、今まで忘れていた無線をヤマトへと繋ぐ。


「ヤマトさん、聞こえますか?」

(…………)


 駄目だ。また無線が使えなくなっている。

 とにかく僕は目の前に開かれた道を進んでみることにした。


「待てよ……」


 道が開けている、それってここを歩いている者が通常よりもずっと低い体温の者だということじゃないのか。とすれば、ここを通ったのは。


「セン……」


 か、もしくはモンスターじゃないか。

 僕は一旦気を引き締め直し、どちらから来たのかわからないそれの後を追う。

 幾らか進むと、僕の耳に壁が避ける肉の擦れるようなべたついた音が聞こえた。

 近くにいる。

 今目の前にある曲がり角の先、そこにここを通った者が。

 適意があると決まったわけではない、でも僕の体には自然と力が入り、無意識に戦闘を意識していた。

 できるだけさらされる体の面積が小さくなるように曲がり角の先を覗き込む。


「……セ、セン!」


 僕に背を向けて立つその黒一色の姿、そしてあのごつごつしいブーツとそれに。

 間違いなく、あれはセンのものだ。そう思った途端、僕は声を上げていた。

 そして僕の叫び声じみた呼び声に黒の姿は動きを止めた。

 しかし、何かが違う。思わず声を掛けてしまったが、姿はセンでも何かが。


「人……違い……」


 でも、あのチャクラムは。

 再び黒の姿に振り返ると、そこにはもう姿がなかった。

 僕は先を行った黒の姿が開いた先へ進む。


「こ、ここは……」


 壁面にいくつも並ぶカプセルの数々。そしてその中心には円柱型の太いパイプの束があり、それを囲むようにして設置されているキーボードやモニター。

 どうみたってこれは砂漠のダンジョンのあの部屋とそっくりじゃないか。

 ネロガーデンにもダンジョンがあることは予想していた。

 でもまさか、同じような構造だとは思いもしなかった。

 驚愕している僕は、マスクがなければとんだ間抜け面をしていることだろう。

 その時、柱の向こう側のカプセルが開くガスの抜ける音が聞こえた。

 僕は柱を回り込みその音の方へとできるだけ音を立てないようにそっと近付く。


「どうしてここへ?」


 カプセルの前に立って中で眠る謎の生き物を触診しながら黒の姿の女が話し掛ける。

 この声は、声だけはまさしくセンだ。でも、やはり何かが違う。


「セ、センなのか?」

「セン……。あなたはその人の何?」

「ち、父親だ。お前はセンだろ? 僕を忘れてしまったのか?」

「忘れる……それは少し違うわ。私は最初からあなたを知らないもの」

「な、何を……」

「私はスラスト、センという人ではないわ」

「違う! お前はセンだろ!? マーマンで……そのチャクラム! それはアイロスさんからもらったものだ! それにそのマスクだって、お前がセーレさんにねだって譲ってもらったものだろ!? 全部忘れてしまったって言うのかよ!」

「ごめんなさい。私はそのどれも知らない。あなたが父親だということも、この身に着けているもの歴史も」


 何がどうしたっていうんだ。

 どうしてセンは何も覚えていない、なぜセンは自分を別の名で呼ぶんだ。


「……悲しいのね。でも、これも神の思し召し。誰も悪くないのよ」


 スラストと名乗る女はそう言って僕の前に立つと、僕をそっと抱きしめた。

 冷たいスーツの感触。それはふざけて抱きついてくる時のあの冷たさだ。

 僕はこの感触を懐かしいなんて思わなければならないのか。

 なぜ急にこんなことに。


「もし、あなたが許してくれるのなら、あなたをお父さんと呼んでもいい?」

「……やめてくれ」


 それはセンが僕を呼ぶ時のものだ。

 お前が口にすることじゃない。


「そう……。ごめんなさい。出過ぎた真似をしたのね、私」


 やめてくれ。センの声でそんな他人のようなことを言わないでくれ。

 やめてくれよ。


「あなたの痛みを私が知ることはできない……。それも神の思し召し……」

「やめろ! やめて……くれ」

「ごめんなさい……。私、何か悪いことを言ったのね」

「その声はセンのものだ、お前が使っていいものじゃない!」


 センの声で僕を知らないなんて言わないでくれ。


「これは私の体……。センという人のお父さん。私はもしかするとあなたのセンというあなたのお子さんなのかもしれないのね?」

「そうだよ! なんでセンじゃないんだ!」

「でも、私は私を私としか認識できない……。センという人は私なのかもしれないけれど、私はセンという人ではないの。私は神によって在るべき場所に置かれているに過ぎない。これは神の思し召しなのよ」

「何が神だ! どうしてそんな奴の勝手でセンが……センがいなくならなければならないんだ!」

「……賢神ホルダ。かのお方こそ世界をそうしたらしめる者。この世界は賢神ホルダによって想像されているもの」

「だから! だからなんだっていうんだ!」

「ここは賢神ホルダの想像の世界。そういうこと……」


 ホルダ、創造。世界は誰かの手で作られたりするものじゃないはずだ。


「あなたのセンは想像のものではなかった。だからここにはいられなかったのよきっと」

「ど、どういう……」

「そうね……。私は虚構であなたのセンは事実。そういえばわかってもらえる?」


 今目の前にいるスラストが作り物でセンはそうではない。

 どうしてそんなことが言えるんだ。


「私は作られた存在。神の予測領域の中に存在する者。……あなたはダンジョンと呼ばれるものの正体を知ってる?」

「ダンジョンの、正体?」

「そう。あれには本来の使い方があったの……。あそこは古き海人、アンダーワールドに落ちた海人たちが作った永遠を手に入れる場所よ」

「う、海人? それは……旧マーマンのことか?」

「そう、海人はあなたたちアンダーワールドの後世を生きる者共がマーマンと呼ぶ者。……かつて空気の中に生きる者共を陸人、水の中を生きる者共を海人と呼んだ。陸人は深き思想のもと、地上に世界を創造していった。そして海人は深き知識のもと、海の中に世界を創造していったの。でも、陸人のその深き思想が少しずつズレを起こし始めた。大地を奇跡により起こったと考え、そこから産まれた自分たちこそ万知を得た、管理者たるべき存在だと……。陸人たちは、その思想を愛とした。希少であることに対し敬意を払うということ、それを愛という言葉で表し、それを大切にすることを善としたのね……。しかし、今よりずっと遠い頃、地球は鳴動を始めた。それは初めて地球が目覚めた瞬間、私たちはそれを『原因の覚醒』と呼んでいるわ」

「原因の覚醒……? 地球はずっと活動していた。お前はそれを眠っていたというのか? ハリケーンや地震、火山の噴火それでどれだけの人間が死んだと思う。どれだけの生き物の命が奪われたと思っているんだ。それなのに眠っていただ? センの体を奪った挙句狂ったカルト宗教みたいなことを言いやがって!」

「その思想は、愛? あなたは鉄骨人類ではないの?」

「ぼ、僕は……人間だ」

「隠すのね……。でも、どちらでもいいわ。その『原因の覚醒』こそ陸人の愛という思想が差別的意思であることをしらしめる結果となった……」

「どういうことだ」

「あなたは、寝返りを打つ時に表皮にいる微生物を気にする?」

「…………」

「地球にとって、陸人も海人も動物も自然もその全ては表皮の微生物に過ぎない。地球、つまりそれらの原因が覚醒した後……それは地球にとっての身動ぎだったのかもしれない……その後、硬くひび割れた古い表皮は剥がれ落ちたの。……地震よ。でもそれは陸人の考える程度のものではなかった……。海底を含めて陸も全て、原因はそのほとんどの大きな生物の住処をなくす結果を作ったの」

「ち、地球の破滅? そんなことが本当に起こると思っているのか!」

「破滅? 違うわ。地球は破滅しなかったもの。……そしてそれが、その思想こそが愛が差別的意思である証拠よ。己を希少とし、故に他を希少とする。でもそれは地球にとっては関係のないこと。地球は自分を唯一だなんて考えていないのだから」

「な、なんてことを……! それこそ差別的意思ってやつじゃないか! 地球は一つだ! 生命は! それぞれ一つしかないんだ! それを大切にすることが悪いというのか!? それが、だから神ってやつはセンをどこかに消してしまったっていうのかよ!」

「……落ち着いて。全ては事実……神の思し召しよ。それに私は、センが消えたとは思っていないわ。センはホルダの想像の中にいられなかったというだけ。私は少なくともセンはいると信じている」


「だってあなたが信じているのだから」、そう言ったスラストはマスクの下でどんな表情をしているのだろうか。


「原因の覚醒によって表皮は崩れ、大きな生物のほとんどは行き場を失った。その時、海底を住処としていたために空気を必要としなかったこと、そして海人を満たしていたものが海だったことが幸いして海人は表皮の先、このアンダーワールドに落ちても生きながらえた。でも、この一件が私たち海人に思想を与える結果をも作り出したの。それは陸人の愛からは遠かったものの、それでも保持する重要性を考えるに十分な出来事だったのね……。それまで無思想だった海人は分かれた、生を保持することを目的とする者と環境に適応することで生活しようとする者に。前者は後にマーマンと呼ばれ、後者は鉄骨人類として進化を遂げた……。環境に適応しようとしたマーマンたちは、アンダーワールドに満ちる放射線によって多くが生命を落とした。そういった多くの生命を糧にマーマンたちはついに呼吸を知ることになったの。そうして少しずつ体内に蓄積されていった放射性物質は彼らの臓器、肉体と強固にしていったわけね。それが鉄骨人類の誕生……」

「放射線……」


 ここが地球内部なら当然あり得る話だ。

 しかし、それを吸い込んで丈夫になるだなんて、そんなことあり得るのか。

 それよりも、スラストはなぜそんなことを知っているんだ。


「マーマンたちは隙間に溜まった海の中に住みその深き知恵を用いることで時を解釈し、永遠に憧れた。理由は簡単ね。生を保持する、つまり永遠を身に宿すことで破滅に耐えるためよ。彼らは怖くなったのね、終るということが……。そしてその隙間に作られたのが永遠を得るための施設。ダンジョンよ」

「ダ、ダンジョンが……そんなことに。永遠を、得る……」

「そう、彼らの時の解釈は鉄骨人のそれとは違うの。マーマンにおける時とは、生の持続期間。どれだけ長く自分の存在を維持できるか、ということ。そしてマーマンはそもそも長い寿命をさらに長く保つため、朽ちる肉体を捨てる決意をした。強靭なる肉体の生成、そのヒントは元同胞である鉄骨人類にあることを知っていたある一部のマーマンは純粋な科学ではなく、生物実験と呼ばれることを行う。ここらにいる鳥人や地上を生きる二足歩行のモンスターのほとんどはその名残りよ。そんな実験の折、一人の少女が産まれた……。少女の名はサミィ・ナージ……。彼女は朽ちぬ体を持ち、類まれなる高い知能を持っていた。成長したサミィはマーマンの科学者を一蹴、その行為の危険性を察した。……彼女は到達していたの、神の予測域に」

「神の……予測域。 なんだそれは」

「思想を持つ者が終焉と呼ぶものよ。永遠の具現化実験で産まれたサミィにはわかってしまったの、この世界が終焉を迎えるのが決まっていることだと」

「そんなの当たり前のことだろ? 何が神の予測域だ」

「違うわ。未来というものは神にもわからないこと。神もまた未来へと向かうぞんざいだから……。でも、サミィが気付いたはこの世界が神の予測域で造られたものだということよ」

「ど、どういうことだ」

「私は虚構だと言ったわね。この世界にあるもの全て、起きたことも含めて起きることもその全てが神の予測域を脱しないあくまで神の予想の範囲での出来事、つまり想像だということよ」

「そ、想像?」


 創造ではなく想像だったのか。だからスラストは自分を虚構だと、そう言っていたのか。


「そう、想像。私たちは全て神に予想されている……そういう存在。この世界の終焉に神が用意したのは一粒の種子の可能性。それは長く成長を続け、今も地中深くに根を張っている。生み出したのは、マーマンよ」

「一粒の種子? そんなのはどこにでも……」

「それが産まれたのはマーマンによる永遠の具現化実験でのことよ。鉄骨人類の体はとても丈夫で魅力的だったけれど、その成長力に耐えられない。だからマーマンは成長し続ける体に適応できる生物の生成を試みたの。……その答えが植物にあると考えたマーマンはサミィから得た朽ちぬ体の遺伝子と鉄骨人類から得た成長し続ける特性の遺伝子、そして成長の負荷を無限の巨大化として適応する植物の無垢なる特性、それらを掛け合わせて永遠を作った。それが一粒の種子『エタニリウム』。エタニリウムはあくまで万能だった、永久に成長し続ける植物を主食とすることでマーマンは栄養の摂取に困らなくなり、それを組み込んだ肉体は強靭にして脅威の再生能力を誇る究極の肉体となった。それがあなたたちがダンジョンキーパーと呼ぶものよ」

「ダ、ダンジョンキーパーが……」

「ダンジョンキーパーは、本来マーマンがその意識を移行するために作られた新しい入れ物だった……。でも、そう上手くいくものではなかったのね。マーマンたちは意識の抽出することまではできたのだけれど、それを新しい肉体に移行することができなかったの。原因は細胞の違い……。人格を形成するために重要な記憶と解釈を保持する細胞の配列が異なっていたため、マーマンの複雑な意識を強靭であるということに特化して作られた新しい肉体は保存できなかった。だからマーマンは意識を削ぎ落とし、生きるために必要な最低限のものだけで自己を構成した。……それを自己と呼ぶのもおかしいのかもしれないわね。その新しい肉体に保存できたのは維持するという基本的な生存本能だけ。感情や解釈は持たせることができなかった。それでもマーマンは永遠を手に入れたと喜び、こぞってその新しい肉体に自己を保存し、海人の肉体を捨てていった。上位科学者から順にね。……あなたは動く死体を見たことが?」

「アンデッドマーマンか……」

「そう、あなたは彼らをそう呼ぶのね。彼らがなぜ朽ちても生きていられたのか、その答えもまたエタニリウムにあったの。マーマンたちも気付かない内に彼らの体はその永久性だけを得ていた。でも、それは肉体を維持するということではなく、残された意識だけが永久に残る結果となったのね。いくら食べても朽ちていく体……でも意識は存続し続ける。それがマーマンには耐えられなかった。結局彼らはその苦痛から逃れるために自我を崩壊させ、暴力性だけを残して今も生き続けている」

「ま、待てよ。それがどれくらい昔の話かはわからないけど、体が永遠ではないのならとっくにマーマンは絶滅しているはずだ。それに、お前だってもともとは子供のマーマンだったはずだ」

「そうね……。でも、その答えも簡単。生体実験の結果創りだされていたのはなにも究極の肉体だけではなかったの。当然、その始まりとして自分たちを複製することは実現化されていた。私は、その最後に作られた鉄骨人類との混合体。その特性は陸水どちらでも生存できること、だから私は呼吸をしなくとも生きていけるの。この胸の動きは、新たに設けられた臓器、高い水圧でも心臓が止まらないように強制的に鼓動させることができるものね」

「だからどうしたっていうんだ。それが増え続けるマーマンとどう関係があるんだ」

「ダンジョンキーパーには維持する自己だけがあると言ったわ。彼らは今でもマーマンを複製し続けている。施設内にいるマーマンの数が減るたびに彼らは複製し、増やしているの……一定の数を維持するために。でも、ダンジョンキーパーには彼らの腐敗度は計算できない。だから、生ける屍と化したマーマンを殺すことはしないわ」

「だけど、それなら生きている内にマーマンはなんとかしようとすればいいだけじゃないか」

「……そうね。そうすべきだわ。でも、彼らは複製。これから自分たちがどうなるのかを知らないの。だから繰り返し繰り返し彼らは生まれては死に恐怖し、エタニリウムの成体を食べる。繰り返し繰り返し……」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……。だとしたら、ダンジョンの深くにはまだ正常なマーマンが?」

「ええ。おそらくは……、でもその実は私にもわからない。私にあるのはサミィの残した過去の記録だけだから」

「その、サミィという少女は……」

「死んだわ。体は今もあの時のまま……。着いてきて」


 そう言ってスラストは向こう側にある扉へと歩き出した。

 



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