伝言ゲーム
今の世は中世。
私は伝書鳩だ。貴族サマが手紙を足に巻き、私が相手の元へと届ける。私の本来の飼い主は、名誉な事にもこの王国の第2王子。因みに届け先は、街の薬屋を営む少女。どこで出会ったのかは知らないし、2人が何を手紙で話してるのかは知らない。少し気になるが。
でも1つ、私にも分かる事はある。お互い、手紙の返事を心待ちにしているという事だ。つまりだな。そういう恋仲なんじゃないかと私は考えている。第2王子と平民の恋、それが結婚となれば大臣やらが黙っていないだろう。相手達が幸せならいいだろう、外野は黙って見守れと思うが世間はうまくいかないらしい。
私がいつも通り、王子が手紙を書き終わるのを机の上にある鳥籠で待っていると、王子が大きなため息をついた。
「はぁ〜〜、」
ここには執事もメイドもいない。話し相手になってやりたいが私はただの伝書鳩。
「なあ、鳩。俺はこの恋を諦めないといけないよな。俺はこの国の第2王子だし、将来はどこぞの貴族の女と結婚させられるのだろうな。ずっと年頃のサラを俺で束縛するのも悪い。そしてこうやって手紙を送り合い、期待させるのも悪い。」
確かにそうだ。その相手のサラはそろそろ嫁に行く年頃。そして、手紙を送る度に気持ちを膨らますのは「諦める」という事に真逆だ。そろそろ辞めた方がいいのかもしれないな。
「サラは縁談が来たらしい。近くの伯爵のオヤジに目をつけられたと。サラの生活も今までより潤うよう。でも、サラの気持ちで縁談は止まっているらしい。だが、身分的に伯爵が強行突破したら……」
「サラが渋るのは、それは俺のせいだ。期待させてばかりで……俺はサラと結ばれたい。だが、この地位が邪魔をする。どうにかならないものか……」
王子はブツブツと呟き、頬杖をついてまた大きなため息をついた。
「あ!」
王子は急にこちらを凝視した。なんだ?
「魔法でお前を俺役にして、俺はサラと結ばれる。これはどうだ!?」
は?私は、今すぐ魔法をかけられる前に籠から出たかった。というか、私は……
王子は指揮を振るように動かし、私に魔法をかけた。
「は?」
「……」
沈黙が流れた。なぜかと言うと、私はメスの鳩だからだ。残念ながら王子のお役には立てぬ。
「……とりあえず服を……」
王子にはセンスが無いようで、真っ白なワンピースを着せられた。
「……ありがとうございます。王子、残念ながら私はメスの伝書鳩です。他を当たって下さい」
「……あー、そうだな。」
眉間を抑えながら、そう言った。
「……私は、そのサラさんと逃避行してもいいと思いますけどね」
「!……諦めずにか?」
「王子は第2王子ですし、跡取りの心配はありませんから消えた伝説の王子みたいな。面白い伝説になりそうです」
「家族には面倒をかけたくない、サラは早くに両親をなくしているから問題は無いが。というかお前、おもしろがってるだろ。俺は真剣なんだぞ」
王子は常に弱音だった。度胸というものが足りてないらしい。
「だから逃避行ですよ。家族との縁を切って隣町にでも逃げるんです。本当にあなた達が幸せを願うのであれば」
「父上やお兄様を裏切るか……」
「王子には度胸が足りませんね。自分の人生なんですし、自由に生きていいんですよ。自分勝手だっていいんです」
「それは言えている」
「私、人里離れた秘境のいいとこ知ってるんですけど」
少しすると、消えた第2王子として王子の顔が乗ったビラが王室の塔の上から配られた。私はといえば、王子に気にいられたようで鳩の姿として連れて行かれた。サラも喜んだようで。秘境には私しか案内できないものね。
秘境での生活は静かにのんびりと時間が流れ、幸せの暮らしだった。
「今日の朝ごはんは目玉焼きとハム!とパン!」
「いいな。サラの作るものは何でも美味い」
私は2人を結論的に結び付けた者として、ふわふわの巣を王子、元王子に作ってもらった。
2人のやり取りを見て思う。手紙でのやり取りから肉声でのやり取りへと変化した。私は、2人を取り持っていた伝書鳩のお役目を終えた。
2人の恋の「伝言ゲーム」。幸せそうな姿を見ると心がホッコリとした。
この幸せが続きますように_____




