春一番が吹いた日
春。まだ、雪が残りまだ春とは言えないが暦の上では春だ。私が住む地域は雪が多く、毎日、家前の雪かきが欠かせない。そして、玄関前の固まってツルツルになった雪ですっ転ぶ。幼い頃は、道路の雪に長靴で入り抜けなくなった恐怖はトラウマだ。
私はコタツでみかんを食べたい気持ちもあったが、長靴を履き、散歩へ出かけることにした。小さな「春」を探して。
道路の雪は溶け、歩きやすかった。道横に溜まった雪を踏みたくなるのは私だけじゃないだろう。鼻歌を歌いながら歩いていると、幼馴染の家の前には幼馴染の優希が居た。優希も雪かきだろう。
「なーにしてんのー」
「お前こそぶらぶら何してんだよ」
「お散歩」
「こんな雪がまだ積もってるのにか?お前はやっぱり変わってるな」
私は自然を大切にしたい。電車に乗る時は、スマホを触らずガタンゴトンという電車の音を聞きながら景色を見る。こんな田舎は電車の本数も少ないし、乗る人も少ないので特等席。
また私は、自分の好きな様に生きていた。皆が小テスト勉強に励む中お菓子を食べたり、先生に当てられて堂々と分かりませんと答えたり。自由に生きていた。それが、他の人からすると「変わってる」に部類されるらしい。
「雪固まってっから滑って転ぶなよ」
「うん、ありがとう」
私は犬を飼っているので、ここらはいつもの散歩コース。だから私の庭同然だ。
私は、道路から外れた林へとあしを踏み入れた。色んなルートを知って、飼っている犬のポチに紹介したいからだ。だから、いつも入らない所を試しに通りたかった。
サクサクと音を立てながら進んでいると、私は伏線回収のように足を滑らした。やばい。優希に言われたように本当に転んでしまった。
滑った先は林が途切れ、田んぼであろう雪の原へと繋がった。こんな所知らなかったや。体についた雪を払うと周りを見渡した。ここらの田舎となると、町内の人は顔見知りだから、ただ私が知らない知り合いの田んぼなんだろう。
私は私が出てきた林の足元が気になった。そこにはなにやら植物が雪に埋まっているようだった。
手袋を外し、かじかむ手で雪をかき分けると、そこにはふきのとうがあった。
「……!」
見つけた。小さな「春」一番。




