口付けは血の味がした
雲に隠れていた月が現れ、私たち2人は暗い部屋で照らされた。
「チッ噛みやがったな!!」
私は無理矢理されたキスで噛んでやった。
「はぁ……興醒めだ」
そう言って男は部屋をバタン!と音を立てて廊下へ出た。
良いざまだわ。失せろ。
今日は所謂、初夜というもの。キスから流れでそうなるはずだが、私は拒んだ。だってあんなくそデブ歳上公爵と結婚なんて政略結婚と言えど嫌だから。お父様に怒られたとしても絶対に私はまた同じ事をするだろう。
私は今日与えられた部屋の大きなベランダに続く透明のドアを開けた。有り金と、平民らしい服、少しの食べ物それらを持って私は目をつぶってベランダから飛び降りた。怪我をする可能性もあったが少し足を擦りむいたレベル。私は見張りに見つからぬよう林に入った。
隣町……そこは王都。私は昨晩ずっと歩き続け、わらを乗せて王都へ向かうおじいさんに頼み、わらの中に潜り込み王都へと侵入した。
私は仕事は無いし、家もない。どうしたものかと思いつつ、仕事募集の「急募!!」という紙が目に入った。その内容は、王都騎士の募集だった。騎士か……私は魔術や知識を身に付ける時、剣術に長けていた。向いているかもしれない。
とまあ、話が早いが、運動神経バカなので、騎士に合格した。私はフードを被って王都へ来た。なぜかと言うと、無駄に顔がいいからだ。うちの家系は、暗殺業を主にする家だった。Nice FaceとNice Bodyで、擦り寄って相手を出し抜いて情報を抜いたり暗殺したり。髪を高くゆい、パンツスタイルの騎士服に、腰に剣。やっとの念願のお仕事。寮に入ったので、雨風もしのげる素晴らしい生活が幕開けた。
新しい騎士だけが集められ騎士団長からのお言葉を授かった。そこには勿論女は私だけ。周りからの視線は無視する。騎士団長にもチラリと見られた。本当に女騎士は少ないのだろう。私は騎士団長の「ここは実力主義だ。何かあれば力でねじ伏せろ」という言葉が耳に残った。
男女構わず、力が強ければ上に立てるという意味を持っているんじゃないかって。私の騎士ランクはA。ABCD……とある中のAで、次がSだ。この中でかなり強い方だと思う。
木刀での鍛錬に入った。すると、ニヤニヤと私をバカにするような目で見る奴らが集まってきた。
「おい女。お前負けたら俺の舎妹な」
「じゃあ、私が勝ったら貴方は私の事を舐めた目で見ないでください」
「……おーいいぜ、そんなしょうもない願い。さっさと1本とってやる!!!」
そう言うと木刀を持って走ってきた。私はそれをかわし、また彼の振る木刀をかわし、それが続いた。
「はぁ、はぁ、当たんねぇ……てか。お前逃げてばっかでビビってんじゃねーの??」
「はぁ?……当てられないくせに」
「ア?」
ぼそりと呟いたのに聞こえたようだ。相手は目の色を変えて本気でかかってきた。
相手で遊んでいたら今後の生活で意地悪なんかされたら困る。走りかかってきたそいつの木刀を弾くと、木刀は空中を舞った。
「1本。次、そこで笑ってたお前」
取り巻きの男を指さした。先程戦った男、目の前の男はは腰を抜かし、顔をひくつかせながらこちらを見ていた。
「騎士ランクA。レヴィ・アクシア。私に負けたヤツ全員下僕ね」
私は何人もの騎士と汗を流した。皆、体の限界で倒れ込み土に埋まっていた。私に負けた者は、私の事を「女王」と勝手に呼んだ。最初は笑ってたくせにお調子がいいんだから……今のところ誰も私に勝っていない。こんなもんかと思っていると、声をかけられた。
「俺も手合わせ願いたい」
前から歩いてきたのはガタイのいい、そしてクールでイケメンの騎士。雰囲気的に強者そうだ。
「お願いいたします」
やはりこいつは強者だった。木刀を振るう、木刀のギリギリという音が絶え間なく続いた。
「ランクは?」
「お前と同じAだ」
「やっぱりそうなんですね」
「この勝負はキリがない。引き分けとしないか」
「いいですよ」
お互いに攻撃をやめた。彼は手を差し出した。私はその手を握り握手をして和解した。すると、勝負を見ていた騎士達が歓声を上げた。
「俺はゼイン・ルーク。引き分けと言ったが現時点では俺の負けだ。この戦いも、その前の戦いもお前は汗1つかいていないからな」
「…よく気付きましたね」
私はゼインにハンカチを投げた。それを受け取ったゼインは目を丸くした。
「このハンカチ……貴族令嬢でなければ手に入れられないようなものだが?」
「詮索しないで」
私たち2人が話していると騎士団長が寄ってきた。何を言われるのだろう。
「私が言った、実力でねじふせる_____レヴィ、ゼインよくやった。聞け、騎士共。今からランクバッチを付与する。襟に付けておくように」
皆の目の前には金色のバッチが浮かんでいた。彫られているのは「A」という文字。
「ねぇゼイン」
「なんだ」
「どっちが先にSに上がれるか勝負ね」
「いいぞ。負けた方が1つ言うことを聞くでどうだ?」
「私は下僕でもいいけど?」
「レヴィの事は騎士として対等に見ている。だが一応女性だ。紳士として女性の下僕を持ちたくない」
「そう」
騎士の仕事は、王都を巡回したり騎士として鍛錬をしたり。強化合宿などもあり、自分が強くなっていくのが分かった。昇級試験でなかなかSにまで到達するのは難しく、段階を踏まないと行けないらしい。Sで団長レベルだもの。ゼインとはバチバチにライバルに燃えていた。何かにつけて勝負を挑み、勝って負けて勝って勝って……ある日、私とゼインは騎士団長室に呼び出された。
「お前たち2人が騎士の中で1番Sに近い。次の昇級試験で決まる。本気で挑め」
「はい」
その昇級試験とは、「護衛」だった。試験とは知らせずに、そして最近命を狙われているというとある男爵令嬢を守る仕事。どちらかが昇級するか、または2人とも昇級するか。
お嬢様はおてんばで、昇級試験は手が焼けるものだった。気分屋で、庭園の散歩へ出かけたり、本が好きな彼女は図書室へ行き、彼女を走りながら追いかけるという……結果、2人とも通過できた。
つまり、ゼインと私2人ともSだ。
「はぁ、やっとあのややこしい、おてんばから開放される……」
「心の声漏れてるよ?」
Sになった。つまり、騎士団を持つこととなり団長となる。
「なあ、レヴィ」
「なに?」
「約束覚えてるか」
「ああ、どっちが先にSになるかっていう約束ね」
「2人とも同時になれたんだから祝いとして、お互いの希望を1つ叶え合わないか?」
「……ええ?私はゼインにないから特にだけど、ゼインは何して欲しいの?」
「……俺と結婚して欲しい」
「……は?いや、え?」
私は目が点だった。ゼインに結婚欲があった事に驚きだし、私をそういう目で見ていない感じだったのに見ていたというのに驚き……
「お前は騎士を続けてもらっていいし、お前のお願いなら聞くつもりだ」
私のお願いは、あの入団式の時に考えていたシンプルなものでゼインと友達というか、これから先も仲良くして欲しいというそれだけ。
「お前の希望を聞こう。」
「シンプルだけど、これから先も仲良くして欲しいなって思ってた……」
「つまり、結婚してくれるということか?」
「いやいや、いや、違うというかそれとは違う仲良くというか」
ゼインは残念ながら脳筋なところがある。
「じゃあなんだ」
その日から、ゼインとの今までとは違う戦いが始まった。




