時計の針が止まったら
もし、もしも。時計の針が止まったら私はどうするだろう。
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今日はいつも通り学校だ。昨日目覚ましをかけ忘れたのかアラームが鳴らず遅刻寸前。成績もギリギリだし、出席日数だけはと思い走って学校へ向かう。
「あー、」
こういう日に限って、赤信号によくひっかかる。苛立ちながらも、時間を見るためスマホに目を向けた。ああ、時間が止まってくれたら間に合うのにな。
もう既に廊下には誰も居ない。チャイムはまだ鳴っていないはずなのに、いつもはガヤガヤと教室から声が聞こえるはずなのに。とりあえずギリギリセーフで教室に着いたと思うと、私は目の先の光景があまりにも衝撃的でスクールバッグを落としかけた。
まだ眠いのか目を伏せて腕を組んでチャイムが鳴るのを待っているだろう担任。女子3人で話しているような光景。走っていたのだろう足を上げている男子。全てが止まっていた。私は恐る恐る静寂に包まれた教室へと足を踏み入れた。試しに近くにいた瞳を開いたままのクラスメイトの目の前で手を振ってみたが、無反応。なんなんだ、ドッキリにしては規模がデカすぎる。時計の針、スマホの時間さえも止めてしまうのだから。
放課後でもないのに静かな教室。私はこの静寂と不思議な空間を楽しみつつあった。床にポイとスクールバッグを置いて廊下へと駆け出した。
私はなんで止まらなかったんだろう?
私が時間が止まったらな、なんて願ったから?
考えつつ、くるくると回りながら気分良く廊下を歩く。なんて幸せなんだろう!時間が止まったら好きな事ができちゃうんじゃない?ショッピングだってダメな事だけど、お金を払わずもらっちゃったり、いつも嫌ほど混んでいる街を散策したり。友達を誘って行きたいな。
「あ、でも皆は止まったままなんだった」
そう悟ると、この不思議な止まった世界が少し怖くなってきた。私だけの世界。何も起こらない。私は廊下の窓から見える、晴れた空の止まった雲を見つめた。
すると、目の前がぐにゃりと動き出し立つことも出来ているのか分からないゆがみを感じた。ぐにゃぐにゃと、窓の縁がゆがみ、酔いやすい私は目を瞑った。フラフラとした感覚が無くなった時、私は目を開けた。
そこは真っ白な世界だった。何も無く、どこまでも続く白。その中に1つ学校の机と椅子のようなものだけがあった。
「何、」
……
もう何時間、何日経ったか分からない。
教室の静寂から白い空間に移り、私はまだこの空間に囚われていた。家族や友達はどうしているんだろう?まだ止まっているのかな?皆に会いたい。もう会えないのかな?
私が時が止まったらな、なんて考えたせいだ。
私はヘタリ込み、乱雑に涙を拭った。今がいつかも分からない状態。気が狂ってくるのもおかしくない。こんな世界なら生きていたくない。……私はふと、考えてしまった。
”私の時間も止めてしまったら?”
私は自分の首に手をまわし、ぐっと私の出来るだけの力を入れた。
「……はぁ、はぁはぁ……」
私は後ろに倒れて咳き込んだ。自分の力なんでこんなもんだ。結局、死ぬのが怖いんだ。人間として自然にそう思ってしまって加減をしてしまう。私はそれが忌々しくなった。誰か、誰か私を救ってくれないかな。今ならどんな対価を払っても悪魔でもなんでも契約してやる。だから、この世界から出たい。
よろよろと立ち上がり、あの机と椅子へと歩みを進めた。私はここに来てから、白い空間にポツンとあるのが不気味に感じたので近寄らなかった。けれど、引き寄せられるように近付いた。
椅子を後ろに引き座った。すると、急に騒音が聞こえ真っ白な世界が溶けるように教室が現れた。ガヤガヤといつもの教室。
キーンコーンカーンコーン
私は辺りを見渡すと、自分の席に座っている事に気づいた。固まる私を置いて、始まる朝のホームルーム。
最初からあの椅子に座れば良かったんだ…私はいつもそんな事無いのにあの時、確かに精神的に追い込まれた。それが今にも残っているのが不思議な体験が存在した証拠。
金輪際”時が止まって欲しい”なんて思わないと心に誓った。




