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すれ違いの果てに



「もう別れちゃいなよー、そんな男に心かき乱されるより次行こ!他にいい人いるって。世界には何億と人が居るんだからさ!」


私は友人に電話悩みを打ち明けていた。社会人ともなるとなかなかお互いに予定が合わず、でも相談に乗って欲しくて友人に電話をかけた。その悩みとは、彼氏の颯太と上手くいっていない……所謂、倦怠期とやらだろうか?高校で知り合って付き合いだしたのは数年前。私は恋愛において経験が豊富じゃないし、男女のどうこうは今もまだ分からない。でも、数年付き合って急に上手くいかなくなるのはおかしいんじゃないかと思う。数年間その人と一緒に居るのだから。上手くいっていないというのは、DMが以前より素っ気なかったり、お互い休みが合わずデートも最近できていなかったり。数年経っても同棲話が立たないのも不安だ。最近は恋人らしい事が出来ていないのが不満というか。私が恋愛脳過ぎるのか。ずっと付き合いたてのようなイチャイチャカップルというのは少数派だと思うけれど、素っ気ない態度が私を不安にさせる。だから、私も連絡を控えて本当に最近DMをしたのは何日前の日か……


もしかしたら、颯太の職場で気になる人が出来てしまったのかな?ただ忙しいだけなのかな?だなんて悶々と考えてしまっているからか、近頃、仕事でのミスが多い。



「最近素っ気なくても、でも、やっぱり颯太の事好きなんだよね」


「もう答え出てるじゃん!1回無理矢理にでも会う約束取り付けて、腹を割って話してみたら?それが一番だと思うけどね」


友人が言う通り。でも、私はまたDMを送って淡白な返信が来るのが怖くてなかなか送れない。だって、最後のDMは私で終わっていて、「颯太最近どう?」の既読無視で終わっているのだ。これは誰でも送りにくいだろう。私は聞いてくれてありがとうと友人に言い通話を切った。何かアクションを起こすべきだとは分かってるのに…



今日は会社の飲み会で、私は悩みの事もあり早いペースでビールを飲んでいた。


「先輩大丈夫っすか?水挟んだ方がいいですよ」


唐揚げを食べて、またビールをあおっていると私の後輩が席を移って横に座った。


「呑みたい気分だからいいの!」


「俺は先輩の肝臓が心配ですよ」


こんなヤケクソな所を後輩に見られるのは恥ずかしいが、本当にヤケクソな気分なんだ。私は、ふと思いついた。男性目線で私の悩みを考えてもらったらいいんじゃないかって。


「あのね、悩み事があるんだけど聞いてくれる?男性目線で意見を聞きたいんだけど_____」



ぐちぐちと話していると後輩が唐突に言った。


「俺ならそんな気持ちにはさせませんよ」



私はその言葉に面を食らって、酔いが覚めた。こんな平凡な私が、漫画やら小説であるような言葉を言われるとは。この言葉はつまり、後輩が私の事を好きだと言う事になる。私が驚いていると、周りがその言葉を聞きつけて勝手に盛り上がっていた。私は会社の誰にも彼氏がいる事を言っていない。同僚達が酔いがまわりつつ、「よ!」だの「よく言った!」と言っていた。雰囲気的に後輩の恋を応援しているのだろう。私には彼氏がいるのに…でも、今はそんな彼氏だとかそんな感じじゃないけど……


「先輩、俺とふたりで二次会しませんか」



私はまんまと、後輩からの好意に負けて2軒目に来ていた。自分自身じゃ今まで気付かなかったけれど、人寂しくなっていたらしい。こんなんじゃダメなのは分かっているけど、颯太があんなんじゃこの後輩の方が愛してくれるんじゃないかだなんて思ってしまう。颯太の事は好きだ。でも、最近の颯太は別の人みたいで私も冷めてきたのかもしれない。



ーーーー



俺は仕事が繁忙期に入り、忙しくて彼女の彩とまともに連絡を取れておらず、デートにも誘えていない。申し訳ない気持ちでいっぱいだが、そこまで手が回らないのが俺の現状だった。俺の予定プランでは、数年付き合って彩と合うという事も分かったしそろそろ同棲もしたいしゆくゆくは彩との結婚も考えている。彩とならいいと思っている。


久しぶりに開いた彩とのDMは、彩で終わっていた。相手にとっては既読無視。でも俺は、見て後で時間のある時に返そうと思っていたのだがすっかり忘れていた。最近は仕事が落ち着いてきているので、デートにでもと思い連絡をしようと思い、「彩返信遅れてごめんな。最近仕事がやっと落ち着いたからデートにでも行かないか?」と送った。


仕事終わりの今、少し呑みたくて飲み屋街を歩いているとよく見た事のある女性を見つけた。


彩だ。駆け寄って話しかけようとしたが、その横には男がいた。まさか、彩がそんな事はないと、信じたい。男と彩は仲が良さそうで、彩は楽しそうだった。男の方は見るからに彩に気があるのは分かった。それで2人きり。彩がそれを許したということは、両思いと考えてもいいのではないだろうか。俺は冷水をかけられたように動けなくなり、また、彩の楽しげな顔が目に焼き付いた。


俺はおもむろにスマホを取りだし、先程送ったDMを取り消しした。



呑む気持ちも消え自宅へとさっさと帰り、シャワーも浴びベッドへ体を委ねた。無意識にスマホで彩とのDMを開いていた。近々の彩の返信は淡白で、俺の方も忙しいというのは言い訳だが改めて見ると淡白だった。俺がいけなかったんだ。彩の事を後に回しすぎた。あの2人は呑んだ後、まさかホテルにでも行くのだろうか。彩の事を信じたいが…俺は彩の事を幸せにできないのだろうか。俺は彩の幸せを願っている。それなら俺は_____




「もしもし、彩、久しぶり…あの直球に言うんだけど俺達別れよう」


「久しぶり。……へ、?今なんて」


「俺は彩を幸せにできないって気付いたんだ。彩の幸せを一番に願ってるから幸せになれよ」


「……なんで急に!!待って颯太」



俺は会って別れる事も出来ないヘタレだ。まだ彩の事が好きだから、電話で顔和を合わせずに言ってしまいたかった。こんな自己中心的で最低な俺じゃなくて、あの男と上手くいく事を願ってる。





数年後、彩はあの時の男と結婚した。俺は、彩の男友達から情報を聞きつけて、彩の友人として行きたいと言った。本当は元彼なんて誘いたくないだろうが、純粋に彩の幸せな姿を見たかった。



真っ白なドレスに身を包んだ彩はとっても綺麗だった。頬は赤らんでいて笑顔で、俺が身を引いてよかったと言えるほど幸せそうな顔で。


その隣に立つのが、もし自分だった可能性がふと思い浮かんでしまったが俺は彩の幸せな姿を目に焼き付けて心から結婚を祝った。



すれ違いの果てに、別々の人生を歩むことになった2人のお話。

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