第0話 成群Ⅱ
【藤堂優斗と佐伯真帆】
藤堂優斗は立ったまま周囲を見ていた。
森。
森だ。
見渡しても木ばかりだった。
人の気配はない。
藤堂はゆっくり息を吐いた。
周囲を見る。
地面。
木。
空。
人はいない。
静かすぎる。
風はある。
葉は揺れている。
生き物の気配がない。
鳥の声も、虫の音も聞こえない。
藤堂はポケットを探る。
スマホ。
画面はつく。
圏外。
藤堂は顔を顰めスマホをしまう。
ここがどこかは分からない。
立ち止まっていても状況は変わらない。
まず動く。
視界の端に文字が浮かんだ。
【ギフト:剣聖】
藤堂は足を止める。
剣。
踏み込み。
間合い。
重心。
知らないはずの感覚が、頭に流れ込んでくる。
藤堂はしばらく黙っていた。
息を吐く。
こんなの、どう使えっていうんだ。
そもそも剣なんて持っていない。
不思議と頭は落ち着いていた。
人を探す。
それが先だ。
藤堂は歩き出した。
木の向こうで葉が揺れた。
足を止める。
音の方を見る。
「誰かいる?」
少し間が空く。
葉が動く。
木の影から人が出てきた。
佐伯真帆だった。
髪が乱れている。
呼吸が浅い。
少しふらついている。
佐伯は藤堂を見る。
「やっぱり藤堂くんだった」
顔色が悪い。
「大丈夫か」
少し間を置く。
「具合悪そうだぞ」
佐伯は一度目を閉じる。
呼吸を整える。
「……平気」
そう言うが、視線は動いていた。
何かを探しているようだった。
「どうした?」
佐伯は少し迷う。
「藤堂くんが近くにいるのは分かってた」
藤堂は眉を上げる。
「分かってた?」
佐伯は小さく頷く。
藤堂は少し考える。
「……ギフトか?」
佐伯は視線の端を見る。
「うん」
「反射知覚って書いてあった」
少し言葉を探す。
「近くにいる人の位置が分かるみたい」
藤堂は少し驚いた。
それから頷く。
「便利そうだな」
佐伯は苦笑する。
「まだ……慣れてないけど」
佐伯が森の奥を見る。
「……誰かいる」
藤堂は視線を向ける。
「近いか」
佐伯は少し集中する。
それから言う。
「うん」
少し間。
「女の子」
さらに数秒。
「たぶん……鬼塚さん」
藤堂は短く言う。
「合流しよう」
歩き出す。
止まる。
振り返る。
「歩けるか」
佐伯は少し驚いた顔をする。
それから頷く。
「……うん」
藤堂はそれを確認してから進んだ。




