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ENDLESS NIGHT  作者: 清水進ノ介


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第八章 時間の分岐路 四

第八章 時間の分岐路 四


 さぁーてと、こっからどうしたもんかね。闇の核ってのは、俺が考えていたより相当やばい。カンスケが惨敗した化物なんて、王様くらいしか勝てないんじゃねぇのか?もしくは本気を出した俺とかヴォンなら、なんとか勝てるかもしれねぇ。でもその為には一旦死神界に帰らねぇといけねぇし、王様に力を解放してもらう必要もある。こっちの世界に魂を完全に移行する必要も出てくるしな。

「俺もまだあんまり、この世界の調査が進んでるわけじゃなくてよ。お前らは核と戦ったことはないでいいよな?」

「一度ある。その時は麗冷が核を破壊した」

「うわ、まーじか。じゃあ今回も任せていいか?」

「わたしに出来るのは、核の動きを止めるくらいだよ。わたしはまだ、感情を乗せないと力を扱えないから。怒りも憎しみもない今の状態だと、破壊の力は発揮出来ない。でもガンジイとムクを守りたいって気持ちがあるから、守備方向での力の使い方なら出来るよ」

「無の力に頼らねばならぬか」

「闇の核相手なら仕方ないよ。ガンジイも言ってたでしょ。この力を使わないと進めない道があるって」

 俺が集めた情報によると、闇の核ってのは魂のエネルギー数万人分が一気に凝縮されることで形成される。そんなもん別の世界で見た事ねぇ。いくらこいつらがこの世界の中でトップクラスで強いとしても、数万人分のエネルギーの相手なんて本当に出来るのか?

 ……カンスケは闇の核に惨敗した。正確には闇の勢力全体がだ。核の相手をしたことがあるってことは、勝算があったか、そうせざるを得ない状況だったんだろうが……。

「なんか、腑に落ちねぇな……」

「なにがだ?」

「なんでカンスケは、闇の核に負けたんだ?」

「……力が及ばなかったから、しかなかろう」

「……いや、まさかとは思うけどよ……」

「それを選択したとするなら、奴はもはや人間ではない。邪悪そのものだ」

 わざと、負けた。そうする理由は一つ。負けた先の未来の方が、カンスケにとって都合がいいと判断したから。周囲の人間にそれを全く悟らせることなく、むしろ本気でそれを後悔しているように見せかけて、実際は負けること。自分の組織を壊滅させることが目的だった。……いや、さすがに考えすぎだよな。クラフォンが奴にやられたせいで、過大評価しちまってるだけだ。

「ノイ、英語って分かる?」

「この世界で文明崩壊前に使われた言語だろ?」

「It's about balancing the darkness and the light.(闇と光の均衡を取るためだよ)」

「……」

「He deliberately did not prevent the "dark control device" from being destroyed.(カンスケは「闇の制御装置」をわざと壊させたんだよ)」

「いや、悪いな。英語がなにかは知ってるが、話せるわけではねぇんだ」

「私とムクには聞かせたくない内容のようだが……」

「まあね。じゃ、ここから離れようか」

 こいつ……。なんだ、俺にそれを教えて何を企んでやがる……?

「カンスケなら、ぴったりでしょ?」

「……次はなんの話だよ?」

「そのうち分かるよ。今カンスケからこっちに信号が届いてるけど、あなたにも感知出来てる?」

「分からねぇな」

「ミニちゃんのビームが闇の扉の中から、こっちに向けて飛んでくるよ」

「おー、たいようビームかー?」


 こいつ、考えてたより厄介だぞ。どこまでの未来を予期して、なにを起こそうとしてやがるんだ。王様はこいつの魂を短剣で刺せば、無の力を消せるって言ってたけどよ。それがどんどん困難になっていってる。刺せば、の話だ。どうやって刺すんだって話だからな。

 ……調査はほどほどにして、早く決戦を始めないといけねぇ。こいつらに、戦いの準備を整えられる前に。

「ビーム来る前に、核が暴れないように止めた方がいいのかー?」

「もう止めてるから大丈夫だよ。核をっていうか空間軸を固定したから。出てきた瞬間に固定されるようにしてあるよ。ただビームの余波はこっちまで届いちゃう、出来るだけ離れよう。ほら、ノイも一緒に逃げるよ」

 いつの間にか主導権を握られてるな。計算の上でやってんのか、こいつ。まあここは従っておくか。そのビームとやらがどれほどのもんなのかも見ておきてぇ。こいつらの戦力の分析、死神の誰がそいつと戦うことになるか、ちゃんと考えておかねぇとな。

「ここまで来ればもう大丈夫だよ」

「まだ近くはないか?前回見たときの力は凄まじかったが」

「カンスケが出力を調整してくれるから、ここで十分だよ。今回打つのは最高出力じゃないから」

 闇の扉からしばらく遠ざかる。たいまつの火の明かりが、扉まで届かなくなるくらいの距離を離れたとき、突然辺りのエネルギー密度が上昇した。闇の核が出てきたみてぇだ。俺は闇の中でも目が利くから、出てきたもんがちゃんと見える。……えげつねぇな、あれ。あんな高密度のエネルギー体、滅多にお目にかかれねぇぞ。

「核が現れたようだな。空気が震えておる」

「あたしはなんにもしなくていいんだよなー?」

「うん。ビーム来るよ」

 闇の核は流線型を組み合わせた人型をしてる。芸術作品みてぇな形してやがるな。あれがどんな力を持っていて、本来はどんな猛威を振るう存在なのか、それが分からねぇことがありがたい。それよりも、これだけのエネルギー量を空間上に固定出来てるのも恐ろしいな。

 そんなことを考えていたら、闇の扉の中から、強烈な光が発生した。一瞬だけ周囲が真昼間みてぇに明るくなって、その明るさ全部を一点に集中させた光線が、核に直撃した。尋常じゃねぇ熱が発生してやがる。しかもあの光線、分子の結合すらほどいてるじゃねぇか。単純な破壊の力じゃねぇのかよ。マクロだけじゃなくミクロの世界ですらぶっ壊してやがる。

「……あれで、最大出力じゃねぇって?」

「うん」

「ふざけんなって」

「ちなみに光線の増幅装置作ったのは、光側の勢力だよ」

「……お前、死神が早く戦いを起こすように煽ってやがるな?」

「その方が、お互い都合がいいでしょ?」

 お互いにか。こいつにも、さっさと決戦を起こしたい理由があるのか。……なんとなく察しがついた。こいつの魂は、無の力に浸食されて、別のものに変質し始めてるってことか。こいつはそれを自覚してる。自分が完全に変質する前に、この戦いを終わらせようとしてるな。人間としての意思が残っているうちに、なにかしらの計画を実行しようとしてるってところか。

 ほんの数回の会話の間に、闇の核は「太陽ビーム」とかいうもんで分解され、あたりに密度の高いエネルギーフィールドが形成された。後はこのエネルギーを裏の世界に送り返せば一件落着ってところだ。……何一つ落着じゃねぇな。俺が甘かった。この世界は本当に異常だ。なんでこうなった?たった一つの世界の中で、これだけの異常な力を持つ連中が集まるなんてありえねぇだろ。

 その後、エネルギーを裏の世界に返して、向こうにいたカンスケと、子供二人が戻ってきた。カンスケと顔を合わせるのは初めてだな。……ぱっとみた感じ、普通の男にしか見えねぇな。常に自分を擬態してるのか。得体が知れねぇ奴だ。

「お、死神さんだ。今は戦いを起こす気はないみたいだね」

「あぁ」

「クラフォンから伝言を預かってるよ。死神の王に伝えてくれって」

「ほう、聞かせてくれよ」


 あっさりと、表の世界に戻って来れたし。とりあえず表の世界に戻る前に、あいつの頭にヘルメットを勢いよくかぶせておいた。ごづんっていう鈍い音がしたけど、別に気にしないでいいでしょ。あいつに「そんなしょげた顔さっさと隠せ」って言ったら、小声で「うん」とだけ返してきた。

 とりあえずガンジイ達に、裏の世界でなにがあったかを報告しようとしたら、知らないトカゲみたいな奴を連れて離れて行った。あれは死神だな。ガンジイとレイレイと死神、三人だけで内緒の話か。こっちで戦いが起きたりはしてないみたいだし、あの死神もクラフォンとかいうこの前の死神みたいに、なにかしら考えを持って動いてんのかも。

 じゃあカンスケのとこに行こうとしたら、ナナゴウを連れて別の方に離れて行った。なんだどいつもこいつも。人に聞かれたくない話ばっかりしようとしてんのか。じゃあミニちゃんと一緒にあの半獣人のとこにでも行くかと思ったら、ミニちゃんはとっくにムクのとこに行って、二人で謎のダンスをしてる。あれには混ざりたくないな。バカの群れの中に入っていくつもりはないし。

 まぁいいや。とりあえず盗み聞きさせてもらうし。まずはカンスケとあいつの話でも聞いておくか。

「なんか、死神と話してたけどもういいの?」

「うん、クラフォンからの伝言はもう伝えたし。じゃあ、さっきの話の続きをしておこうか」

「……まぁ、聞いとく」

「ナナゴウくんは、宗教って分かる?」

「文明崩壊前に、そういう組織がいくつもあったのは教えてもらった」

「おれさ、人を導く為に、世界規模のでっかい宗教を作ったんだよね。苦しんでる人達が幸せに生きていく為の、道しるべを作ったはずだった。でも結果どうなったと思う?その宗教のせいで、たくさんの人が死んだ」

「……なにしたの?」

「おれの制御が効かない早さで、組織の内部が分裂していったし、全く別の宗教の信奉者との間で戦争も起きた。ほんの少しの考え方の違いがあるだけで、異端者だと言って、身内の中ですら殺し合いを始めた。おれが始めたことのせいで、数え切れないほどの人が犠牲になった。おれがやったことは弱者への救済ではなく、悪人が他者を攻撃するための、恰好の理屈を与えただけだったんだ。おれが興した宗教が世界に広めたのは、平和ではなく分断と争いばかりだった」

「……そう」

「きみと同じだよね。人を助ける為にやったことが、その真逆の結果を生んでしまった。失った命を相手に、責任を取ることなんてもう出来ない。今を生きている、心優しい人を助け続けるしかないんだ。おれはもう、悪人を反省させることは諦めてしまったよ。かつては全ての人を救おうとしていたけどね。皮肉だよ。宗教は異端者への徹底した攻撃を許す材料として使われた。当時はそれが決して許されない行為だと思っていた。でも現在、おれは自分の考えに反する奴は全部切り捨てて分解してる。それを光側の人達は、いや、マリアは許せないみたいだね。でも、きみはどうかな?」

「……あなたと友人にはなれないよ。うまく言葉に出来ない複雑な感情だけど、あなたが憎いとはもう思ってない。だけどやっぱり、あなたを許すことも出来ないんだ」

「そっか。ま、それで十分かな」

「ただ、僕自身もなにが正しいのかが、分からなくなってきてる」

「レイレイちゃんに相談するといいよ。ガンジイさんも頼りになるけど、あの子の方が今のきみにはぴったりだろうね」

「分かった。ありがとう」

「きみが自分を許せる日が来ることを祈ってるよ。おれは出来なかった」

「……うん」

 なんか仲良くなってるし。いいのかあいつ。光側のくせにカンスケと和解しちゃって。

 それより、ガンジイとレイレイの方がおかしな話を始めてる。死神とこれからどう向き合っていくつもりなのか。そっちもちゃんと覗いておかないと。


 皆から距離を取り、私と麗冷、そしてノイの三人で話を始める。ノイは私を死神に引き入れるつもりのようだが、私がそのようなことをする理由はない。しかしそれをせねばならぬ理由を、ノイが突き付けてくる可能性がある。ノイはもちろんその為の材料を用意しているであろう。

「言っておくけど、ガンジイを味方に引き入れるのは無理だよ」

「いいや、俺には説得材料がまだあるからな。諦めねぇよ」

「無理だよ。そうならないように、わたしがここでこう話してるから」

「……ほう、聞かせてくれよ」

「本来はそうなる運命だったの。ガンジイは一時、あなたたち死神側につくはずだった。本心ではなくスパイとしてね。わたしたちの誰にもそれを言わずに、独断でそれを実行した」

「そうなのかよ?」

「そんなつもりは私にはない」

「それでガンジイ、明、オクゼツの三人であなたを倒すはずだったんだよ。ガンジイは死神側に入った後、明とオクゼツの二人と戦うことになったの。でもそのときに、演舞で真意を二人に教えてた。こっそりメッセージを送ってたんだよ」

「……麗冷?さきほどから、なにを言っておる?」

「ガンジイが明と再会したときに、教えてくれたでしょ。ガンジイが生まれた村には演舞っていうものがあったって」

「それは、確かに教えたが……」

「あと結構前、初めてオクゼツに襲われたときだよ。たいまつの動きで周囲の仲間に信号を送ることが出来るって教えてくれたでしょ。その信号を演舞の中に仕込んでたの。武器と武器がぶつかり合うリズムの中に信号を入れて、明とオクゼツに作戦を伝えてたんだよ」

 ノイが私の顔を凝視してきたが、麗冷がなにを言っているのか、私にも全く分からぬ。これはこの子がそうなるだろうと予測していただけの話を聞かされているのか?それとも本当に、あるはずだった未来の話なのか?

「最後の決戦の時、死神側はノイとガンジイ。こっちは明とオクゼツ。二対二での戦いになるはずだった。でもガンジイは途中でノイの隙をついて、それを一対三の戦いに変えた。三人がかりであなたを倒したんだよ。すごいねあなた。三人がかりじゃないと倒せないくらい強いんだね」

「……お前、運命が視えるのか……?」

「あなたになら『時間分散』って言えば分かるでしょ。わたしたちの世界だと、ハイゼンベルクの不確定性原理って呼ばれてた理論を時間にも適用したやつ。量子レベルのミクロの世界では、時間に百京分の一の不明瞭性がある。そしてわたしには無の力が備わってる。無というのは、つまりゼロ。母数がゼロの数式は無限という解になる。科学や数学の世界で見ればそれは敗北を意味しているけれど、わたしにとってその時間の不明瞭性は、過去と未来に無限に続く視点へと行き着く」

「化物め」

「言っておくけど、わたしに直接的に未来を変える力なんてないよ。自分が一番気に入る未来に誘導するのが精一杯」

「それが化物だって言ってんだろうが」

 ノイの中にあるのは、敵意ではない。純粋な恐怖。この世界で人が闇を恐れるように、どうやっても抗うことの出来ない、圧倒的な力に対する畏怖だった。その態度や言葉の中にはっきりとそれが見えておる。

「子よ、私にはお前がなにを言っているのか分からぬが、それはお前が望むことなのか?」

「大丈夫だよ。わたしは麗冷のまま。他のなにかに変わったりはしてないよ」

「……ガンジイ、俺はもう行くぜ。もう駄目だ。俺にはどうすることも出来ねぇ」

「つまり、我々の敵になるということでよいのか?」

「分からねぇよ。もう俺には分からねぇ。でもクラフォンは正しかった。この世界は可能性の芽だ。本当にこの世界は宇宙の崩壊を超えられると思うぜ」

「ならばなぜ、敵になる。共に歩めばよかろう」

「分からねぇんだよ」

 ノイは去り際、私に背を向けたまま、こちらに目線を向けてきた。……恐怖や畏怖は消え、そこには諦めだけがあった。

「その可能性の芽は、レイレイが望んだ花を開かせるだろうさ。そう、こいつが望んだ形でな。つまりどういうことか分かるか?」

「すまんな、科学の話は私には分からぬ」

「こいつが望んだ世界にしかならねぇってことだ。それ以外のあらゆる可能性、運命をこいつは壊す。育ち始めた芽は、他の芽を潰し、呑み込み、自分だけをそこに咲かせる。だからもう、俺には分からねぇんだ。俺が今考えてること、これからやること。それは全部、こいつがそうなるように運命を捻じ曲げた結果かもしれねぇ。今俺がこう考えていることすらだ。なにもかも全てが、こいつの意のままだ……」

「……そうしているのか?」

「言い過ぎ。さっきも言ったでしょ、わたしに未来を直接的に変える力なんてないよ。死神だから無の力がどれだけ怖いかは知ってると思うけど、怖がり過ぎ。それを行使してるのは、わたしっていう一人の人間にすぎないんだから」

「……そりゃあどうも。あらゆる知性から自由意志を奪うつもりはねぇんだな?」

「そんな世界を望む奴がいたなら、わたしが消してあげるよ」

「ははっ、そうか。そりゃあ助かるぜ。……お前らが死神になってくれたら、最高の友人になれそうなのにな」


 ノイは闇の中へと去って行った。……しかし、麗冷と話すにも私にはなにを言えばいいのかが分からぬ。もはや議論の土台が別の場所へと変貌してしまっておる。今はさきほどこの子が口にした中で、気になった点を聞いておくとしよう。

「お前がしていることは、危険なことではないのか?この世界のことではなく、お前の身を案じておる」

「大丈夫だよ。ノイはわたしのことかなり怖がってたけど、宇宙の仕組みを根本から壊すようなことはしてないし。そんなことはわたしには無理。本来ありえないことを起こしてるわけじゃないの。そんなことが出来るのは……」

「出来る者がおるのか?」

「お姉ちゃん」

「魔女か。……魔女は今、なにを?」

「とりあえず裏で動いてるね。なにをしようとしてるのかは相変わらず分かんない。でも世界規模の大事を起こす気はないはずかな」

「しかしお前は、その大事を起こそうとしているのではないか?」

「してるよ。わたしを信じてくれる?」

「無論」

 私に理解出来るのは、この子は皆の幸福を望んでいることだ。その過程にもはや、私が力になれることはないのであろう。だが私は、麗冷を信じ、仲間と共に足を進めるだけだ。私には、私にしか見えぬ世界が、現実がある。この子には、この子にしか視えておらぬ世界があるのであろう。たとえそれが異なっていようとも、目指すものが同じであるならば、不信など育つはずがない。

「わたしたちは死神を倒して、この世界の消滅を防げばいいの。その先のことはわたしが責任を持ってなんとかするよ。無の力に定められたわたしにしか、出来ないことだからね」

「その道を、我らが共に歩むことは出来ぬのか?」

「出来ない」

「それは、お前が共に歩ませぬようにしているだけではないのか?」

「うん、そうだよ。でもそれをわたしは望んでるからね」

「我らがそれを望まぬとしてもか」

「うん。わたしがなにをしようとしているか、そのうちちゃんと話すよ」

「ならばそれを待つとしよう」

「じゃ、みんなのところに戻ろっか」

話さぬのは、今は話せぬ理由があるからであろう。聡明な子だ。感情に左右され説明義務を怠るような子ではない。ならばその時を待てばよいだけだ。そしてその理由が誤ったものであるならば、そのときは正してやればよい。私だけではない。この子にはたくさんの味方がいるのだ。

「子よ、これは言っておこう」

「なに?」

「お前が自らを犠牲にしようとしているのなら、私は全力をもってそれを止める。力尽くでもだ」

「……それは怖いなぁ」

「私だけではない。ムクも、ダンデも、ナナゴウもおる。ソノコも呼ぼう。明と臆舌もおる。カンスケとマリアにも協力させる。この会話はヤヨイも聞いておろう。我等全員を相手に、勝つことが出来ると思うか?」

「やめてよ。最終決戦は死神を相手にして」


 ガンジイには、わたしがしようとしていることを、すでに見透かされているみたいだ。でもわたしがそれをちゃんと説明するまで待ってくれるみたい。ノイが去ったところで、ようやく今回の目的に辿り着けた。闇の勢力、カンスケと協力関係を結ぶこと。わたしたちはそれをする為に、闇の本部を目指していたんだ。それがこんなところで達成出来るなら、無駄な労力と時間をかけずに済む。

「もう結論言っちゃうけど、おれ達はガンジイさん達に協力するよ」

「光側と停戦する、とは言わぬか」

「まぁね。でもどっちにしても同じだよ、協力するってことはさ」

「死神との戦いの準備を始めることとなるな」

「で、その決戦の場所なんだけど。結局のところ、おれ達の本部まで来てもらいたいんだよね」

 カンスケとしては、知り慣れた地形の方が活用出来るから、というのがその理由だった。罠の設置場所、敵を迎え撃つ陣形、そういった管理がやりやすい場所を戦場にしたいみたい。ガンジイはすぐにそれを承諾した。地の利を活かすことに異存は一切なしだって。

「しかし、それまで死神が手を出さないで待つかどうかだ。すぐに戦いを仕掛けてきたらどうするのだ?」

「レイレイちゃんなら、死神がいつ行動を起こすか分かったりしない?」

「そこは大丈夫。死神の王はすぐにはこっちに来れないから。さっきノイに会ったときに、その辺の事情を視ておいたから」

 さっきノイは、半分だけ嘘をついていた。死神の王もこの世界の調査に来ているとは言っていたけど、それはエネルギーの一部をこっちの世界に飛ばしているだけで、本体の魂は死神界にいるままだ。死神の王ほどの極大なエネルギー、魂が突然この世界に来たら、エネルギーの総量が極端に崩れて、宇宙規模で問題が噴出する。少しずつエネルギーをこっちに移してくる作業時間が必要になる。

「だから他の死神も、まだ本格的な戦いは起こさないはずだよ。本気で戦う為の準備期間が死神側にも必要になるからね」

「その準備期間というのがおおよそどれほどになるか、見当はつくか?」

「ノイを煽ってやった結果、だいたい二カ月以上、三カ月以内ってところに落ち着いたよ」

「レイレイちゃんさ、やっぱり運命の流れが視えるようになってるよね」

「うん」

 カンスケが笑いつつ、渋い表情を浮かべていた。苦笑いとはまさにこの顔だ。そりゃあそうだろう。わたしたちは今、二つの爆弾を抱えている状態なんだ。一つは死神。もう一つはわたしだ。

「カンスケと二人だけで話したいことがあるの。ちょっと離れるね」

「あたしも行くー」

「大丈夫だよ、カンスケにわたしを襲う度胸なんてないよ」

「相変わらず嫌われてるなぁ。ナナゴウくんとは仲良くなれたのになぁ」

 みんなから一旦離れて、カンスケと二人だけになった。カンスケはわたしの魂が変質し始めてるのに気付いてるから、そこの情報共有をしておかないと。

「無の力で空間を一部分だけ遮断したから、誰にも会話は聞かれないよ」

「もうそんなことまで出来るんだ」

「ナナゴウとヤヨイが合流してから、一気に浸食が進んだ感じ。あの二人がいなくても、勝手に進行していってる」

「で、タイムリミットは?」

「三カ月はなんとか。一年くらいは大丈夫かと思ってたけど無理だ。ちょうど死神側の準備期間と同じくらいは、人間のままでいられそう」

 このままわたしの意識が宇宙の意思と一体化していったら、即座にこの世界を無の力で吞み込んでしまうだろう。そこにもうわたしという人格はなくて、宇宙のシステムを実行し続けるだけの動力の一部になってしまう。そうなる前に、計画を実行に移さないといけない。

「で、きみが企んでることを実行する為には、死神との戦いが必要になるわけだね」

「うん。とにかく大量のエネルギーを放出してもらう。こっち側も死神側にも。それを利用すればきっと成功する」

「ぼくはさ、そういうのは反対。きみ一人に全部押し付けるのは嫌だな」

「今さら」

「反対ってだけで、手を貸さないとは言ってないよ。現実問題、おれもそれが最良の選択だと思う」

 最良か。最善と言わないところは本心みたいだ。あぁそうだ、それと一個、こいつに謝っておかないといけないことがある。

「さっきいた死神、ノイに一つ嘘言ったことがあるんだけど」

「なに、おれに関係ある嘘?」

「闇の勢力が壊滅したのは、カンスケがわざと闇の核に負けたからだって。そう言っといた」

「……」

「怒らないでよ。必要な戦術なんだから。死神が早く決戦を起こしてくれないと、わたしが完全に変質しちゃうでしょ」

「だからってさぁ、おれをそんなクズにしなくてもさぁ」

「死神はあなたを相当脅威に感じてる。火に油を注いでおいただけだよ」

「おれが死神の王と戦うとき、相当しんどくなるでしょ。絶対おれにぶつけてくるエネルギー量を過大にしてくるよ」

「がんば」

 カンスケがげんなりしてる。強い力を持つ者には、相応の試練を受けてもらわないと。戦力の配分的に、カンスケには一時的に、一人で死神の王と戦ってもらうことになるだろうし。だったらその時に可能な限り、カンスケと王の両方からエネルギーを引き出したい。出し惜しみなんてさせたくないからね。

「そういえば、師匠がなにしてるか知ってる?大量のエネルギーが必要なら、あの魔女を使うのが一番いいはずだけど」

「死神界に行ってるよ」

「うわ、敵陣突入?見たかったなぁそれ。魔女と王の戦いとか、予約必須番組じゃん」

「見れるよ。死神界に無の力放り込んであるからそれ経由で」

「最高じゃん!みんなで観戦しよう!」


次回へ続く……

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