第45話 雪、溶ける
キンッ!!
しかし、サイさんの氷の壁が俺を守る。
槍は跳ね返り、地面に落ちた。
サイさんの方を見ると、俺の方へ向かって手を翳している姿が見えた。
「サイさん!ありがとうございま......」
俺は守ってくれたサイさんにお礼を言おうとすると、サイさんの背後で素早く立ち上がるスカーレットの姿が見えた。
スカーレットは短刀を懐から素早く取り出し、サイさんに向かって跳び出す。
「サイさん!!危な......」
ドッ!!
俺は咄嗟に叫んだが、時既に遅し。
スカーレットの短刀はサイさんの背中を貫いた。
「くっ!!」
背中から刺された短刀はサイさんの胸から突き出す。
完全に貫通していた。
「サ、サイさんっ!!」
ザシュッ!!
スカーレットは短刀を引き抜き、少し距離を置いた。
「グッ!!」
サイさんは吐血しながら、貫通した胸を押さえ、倒れる。
「クソッ!!サイさん!」
俺はサイさんに駆け寄り、身体を支えた。
「しっかりして下さい!サイさん!」
「貴女ともあろう者が、随分と手こずっているようですね、スカーレットさん」
その声は俺の背後からした。
後ろを向くと、そこにはさっきの槍を持つ男が1人、他に2人、合計3人が立っていた。
「ザンガさん、フィアさん、タイオさん」
胸を押さえながらそう言うスカーレット。
どうやらその3人はスカーレット達の仲間らしい。そして、さっきの槍を投げてきたのもコイツらだ。
増援だ。やはり突然の敵襲で敵の数も把握出来ていない状態での戦いの弊害が出てしまった。
「......ロ...イ.......く」
サイさんは目は虚ろで胸からは大量の血が流れている。
「サ、サイさんしっかり!!クソッ!何でこんな!」
「......ま.......おう...さ...まを」
必死に声を出そうとするサイさん。
「......た...の........む......」
そう言うと力無く目を閉じるサイさん。
「サイさん!!サイさん!!」
サイさんの身体はゆっくりと溶け出した。
みるみる内に完全に液体となり、俺の手から溢れ落ち、床に広がる。
俺の手にはサイさんの服だけが残った。
「あ......あ.......」
サイさんが死んだ。
嘘だ、そんな......しかも俺を助けるためにスカーレットの攻撃を受けて.......
サイさんが俺のせいで......
「あーあ、雪女殺しちゃったのね」
そういうタイオと呼ばれた女が言う。
「情報を聞き出すために敵幹部は捕獲するミッションのはずでは?」
「......そんな油断をしていて勝てる相手ではありませんでした」
そう言いながら下がるスカーレット。
「雪女は倒しました。これで私の役目は終わりです」
そう言うと瞬間移動で消えるスカーレット。
「あーあ、どうすんのこれ」
めんどくさそうに言うフィアと呼ばれた男。
「残ってるコイツ、雪女と一緒にいたと言うことは結構位が高いのではないでしょうか」
「それもそうね、ねえ坊や」
溶けたサイさんを見ながら泣いている俺に話しかけてくるタイオ。
「......」
「私達、玉を探してるんだけど何か知らないかしら?」
「うるせーよ、そんなもん知るか」
俺は両手で剣を取った。
身体中が痛む、さっきスカーレットにやられたケガの痛みだ。
「テメーら!よくもサイさんを!!」
「あら、ザンガの予想大外れー」
「ふん、私は確率の話をしたまでです」
「じゃあコイツは殺してもいいんだな」
俺を無視して話す三人。
こんな奴らにサイさんが......
コイツらだけは俺が......
「お前ら!許さね......」
ガランッ!!
俺は剣を落とす。
ダメだ、さっきスカーレットにやられたダメージでまともに剣も持てない。
「ハア.......ハア.......サイさんの.......仇!」
「フィア、早く片付けてしまいなさい」
「おうよ!!」
そういうとフィアと言う男は手に火炎球を溜め出した。
火炎球はみるみる大きくなり、直径3メートルほどの大きさとなった。
あれを食らったら一溜りもない。
「くっ!!」
俺は逃げようとしたが、身体が動かない。
「焼き尽くしてやる!死ね!!」
フィアは俺に向かって火炎球を投げつけてきた。
火炎球は真っ直ぐ俺に向かってくる。
ダメだ、避けることも防ぐことも出来ねー。
畜生!!俺に力があれば......サイさんの仇も、そもそもサイさんが死ぬことはなかった。
もっと、もっと俺が強ければ......
サイさん、ごめん、俺仇を取れなかったよ。
面白い!続きが気になる!今後に期待!
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