第26話 魔王城探索 3
俺は魔王様の後を追って地下室に来た。
地下室は一本道になっており、少し進んだ先に鉄で出来た扉があった。
「魔王様、ここだけ随分と厳重になってますがなんの部屋なんですか?」
「ここはトレーニングルームだよ、乱暴な男どもがいるから地下室に作って厳重にしてるの」
魔王様は扉に付いている小さな窓から中を覗き込む。
「あー誰かいるね、とりあえず入ろうか」
いや......トレーニングの邪魔になっちゃうんじゃ......
と思った時にはすでに魔王様はトレーニングルームの扉を開けていた。
キイイィィィィ......
高い金属音がコダマし、扉が開く。
扉の先は広く様々な機具が置いてあり、ここで魔王城のみんなは鍛えているようだ。
それよりも部屋の真ん中辺りに凄まじく巨大な人影が見える。
その人影は2mを優に超える大きさに発達した筋肉を備えるまさに絵に描いたような大男だった。
「ん?何奴?」
大男は俺達に気がつくと、その野太い声と鋭い眼光をこちらに向けた。
や、やべー凄い迫力だ......
「よーッス!トレーニング中?」
その大男に驚くべきほど気安く話しかける魔王様。
大男と魔王様の大きさの差は天と地ほどの差があり、まるで大熊と幼女が並んでいるようである。
「魔王様でしたか。はい、今日は少し魔法の威力調節をしておりました」
そうペコリとお辞儀をしながら言う大男。
そういえば魔王様はモンスター達の王、この大男も魔王様の部下なのだ。
つくづく魔王様の見た目とその肩書きのギャップには驚かされる。
「魔王様はなぜ地下室に?」
「あーちょっと新人くんをね、案内してあげてるの」
「新人?」
魔王様がそう告げると、大男はギロッとこちらに視線を動かし、俺と目があった。
や、やばい......めっちゃ怖い。
俺がその眼光の鋭さにたじろいでいると、大男は俺に近づいてきた。
「新人の方ですか、お名前は?」
そう腰を落としながら言う大男。
え?敬語?
「ロ、ロイ・レンズと申します」
「ロイ殿ですね、某はゴラド・ドラゴルドと申します。以後お見知り置きを」
そう言って頭を下げてお辞儀する大男改めゴラドさん。
その見た目と礼儀の良さのギャップにまたしても驚く俺。
「ゴラドは魔王四天王の1人で第3魔将なんだよ」
そう言う魔王様。
魔王四天王の一員ということは危険度SSのモンスターであることを表す。
やっぱり強いんだなゴラドさん。魔王様やサイさんとは違い見かけ通り強い。
あれ?待てよ?魔王四天王って第4魔将が我等がお姉様、クールビューティーサイさんだろ?んで第3魔将がゴラドさんで、魔王四天王のリーダーで魔王城の責任者、第1魔将がランドさん。
「あれ?そう言えば第2魔将って誰なんですか?」
俺は魔王軍の第2魔将に会ったことがない。
魔王軍の第2魔将となれば、目の前のゴラドさんやサイさん以上で魔王様とランドさんに次ぐ実力者ということになる。
「あー、そう言えば会ったことなかったっけ?第2魔将はキザっていう魔族の男だよ」
聞くと第2魔将キザさんは魔王様の遠い親戚に当たる存在で抜き足の異名を持つ実力者だとか。
それに外交が非常に得意で外出していることが多いらしい。なので俺が魔王城で働き出してからは一度も帰ってきていない。
「まあそんなもんだね。雪女サイ、灼熱豪傑ゴラド、抜き足キザ、絶対防御ランド、その四人が魔王四天王ってことになるね」
魔王四天王に魔王様、この5人が今魔王軍の主軸となっている。
そんな魔王四天王の1人ゴラドさん、物腰柔らかで色々聞けそうだな。
「ゴラドさん、ちょっと聞いていいですか?」
「何でしょう?」
「ゴラドさんはどういう能力を持っているのですか?」
「能力、ですか」
ゴラドさんは少し考え込んだ。
「某はドラゴルド一族という生まれでして、基本的には火の魔法を扱います」
「ドラゴルド一族?」
俺は不思議そうな顔をした。
ドラゴルド一族、恐らく家系の話なのだろうがよく知らない。
「ドラゴルド一族は火竜の祖先、古の時代に火竜だった存在が長い時間を経て人型となった一族だよ。だからゴラドは火に強く火の魔法を使う」
魔王様が説明をした。
捕捉説明として聞いたが、ドラゴルド一族はもう数人しか残っておらず、ゴラドさんは貴重な生き残りだとか。
「そうでございます。昔は魔族と竜の一族は敵対関係に合ったのですが現魔王様レイカ様のお父上ガイル様の尽力もあり今は友好的な関係となっております」
お父上には頭が上がりませぬと魔王様に礼を言うゴラドさん。
魔王様は照れながらも嬉しそうな表情をしている。
ゴラドさんと魔王様の父親とは面識があるみたいだ。
「レイカ様にも頭が上がりませぬ、ガイル様の意志を継ぎドラゴルド一族との友好関係をより一層深い物としていただいた。素晴らしいお方です」
そう言ったゴラドさんに対し、赤くなる魔王様。
「そ、そんな!僕は何も......」
照れながら否定する魔王様に、魔王様の新しい一面を見れたと思う俺。
魔王様は幼いが案外クールで焦ったりしない人だったが、誉められると弱い。なるほど。
「そ、それよりゴラド!地下室にはゴラドしかいないの?」
「はい、先程までサイがトレーニングしていましたが戻っていきましたので」
どうやらトレーニング終わりに部屋に戻ったところ俺達と遭遇したらしい。
なんという不運!
「そっかぁ......んじゃ地上に戻ろうか」
そう言って俺を引っ張る魔王様。
「は、はい!ゴラドさん、失礼します!」
「はい、お気を付けて」
そう言って俺達は地下室を後にした。




