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第18話 デザール山の戦い

「そんな......私なんか全然褒められるようなことは」


リコちゃんは下を向きながら言う。

やっぱりリコちゃんは自分に自信がないらしい。こんなに可愛くて性格も優しいのに。


そう思っていると、少し先から声が聞こえてきた。


「ほら!二人とも早く行くわよ!」


俺とリコちゃんがモタモタしていると、カエデが振り向きながら急かしてくる。


まあ、まずはクマ退治だな!














それから二時間ほど山を登り、山頂付近まで来た。


「ハア......ハア......や、やっとか」


俺はその場に手を付きながら言った。

正直、人生でこんなにしんどいことしたことないぐらいに過酷な道のりだった。


それなのにやっぱり女性陣はピンピンしている。

なぜなんだ、超人なのか?


「あったわ!恐らくあれがマグマグマの住み処ね!」


そう言うカエデの視線の先には大きな洞穴があった。


聞くと、マグマグマはとても頭の良いモンスターで、決まった巣に住むにではなく自分が住みやすい場所に移動して巣食うらしい。


なのでこの火山活動が活発な山頂付近に巣食っているのだろう。


「まずは私が中に入って偵察してくるわ、見つけ次第戻ってくるから戦闘の準備をしてなさい」


そう言ってカエデは洞穴に入ろうとした。


「ちょっと待てよ!」


しかし、俺がそれを止めた。


「何よ?あんまり大きい声出さないでよ」


そう言って振り向いたカエデは不思議そうな顔をしていた。

この表情から何度もこういう危険な場所に潜入することがあったことが伺えた。


「洞穴へは俺が入る」


カエデを危険な目に会わせたくない。

ここは男として俺が......


だが、カエデはサラッとこう言った。


「ダメよ、あなたじゃ危険過ぎる」


「そんなのカエデでも危険だろ」


「私はこれぐらいの危険なんて今までいくらでも経験してきたわ。だから平気よ」


「で、でもよ......」


俺は俯いた。

確かにカエデの言う通りである。

俺が入るよりカエデが入った方が危険は大幅に少ない。



だけど俺は......


「い、いや!やっぱりここは俺が」


「ロイ」


そう言おうとした俺にぐいっと近付き、腰に手を当てるカエデ。


「男の子だから無理したいのはわかる。けどあなたはまだ剣の修行を始めたばかりの素人でしょ?言えば私が師匠、しばらくは私の戦い方や身の振り方を見て勉強しなさい」


俺を指差しながら言うカエデ。


し、師匠......

カエデの言う通りだ。俺はカエデより圧倒的に弱く、カエデの身を心配してあげられる立場ではない。


すると、カエデはまたくるっと振り返って、洞穴に向かって歩き出す。


「......」


「でも......まあ」


カエデは歩くのを止める。

そして、後ろを向いたままこう呟いた。


「は、早く強くなって、私を守ってよね!」


表情は後ろを向いていて見えないが、恐らく照れながら言ったカエデ。


ああ、やっぱり天使だこの人。

天使だよこの人は。


「わ、わかったよ......今回はカエデに任せる」


俺も赤くなりながら言う。


それを聞くと、カエデは親指を立て洞穴へと入っていった。

それを見送って、俺は一人決意を固めていた。


「よし......いつかカエデにも頼ってもらえるような男になってやる!」


「それは微笑ましいですね」


「へ?」


後ろを向くと、ニコニコしているリコちゃんがいた。

そういえばリコちゃんがいるの忘れてた。


は、恥ずかしい......


「リ、リコちゃん、今のはなかったことに......」


「いえいえ、カッコいいですよ。好きな女の子のために必死になる男の子って」


「す、好き!?」


好きって、俺はまだカエデと出会って1週間、まだ俺のことも全然話していないし、カエデのことも知らない。


こうやって今は師匠と弟子の関係で好きとかそういうのでは......


い、いやでもカエデは色んな意味で俺の憧れの存在だから......好きなのかな?


それで言ったら魔王様だってサイさんだって憧れの存在だし、ランドさんも憧れの存在だ。


「うーん、好きとかそういうのまだわからないんだよね......カエデとは出会ったばっかりだし」


俺は異性と付き合ったこともないし、恋愛経験も0に等しい。


だからまだわかんねーな。


「そうですか?お二人はスゴく仲が良くて羨ましいです」


そう言うリコちゃん。


そうか、端から見れば俺とカエデは仲良しに見えるのか?結構喧嘩してたと思うが......


いや、でもカエデは正直誰とでも仲良くなれるタイプの人間であると思う。特別俺と仲が良いわけでは......


俺はガキの頃から別段人気者でもなく友達も多い方ではなかった。カエデは昔から人気者で友達も多かったんだろうな......と思う。


「そんなことないよ、カエデは誰とでも仲良くなるタイ......プ?」


俺がそう呟きながらリコちゃんの方を向くと、リコちゃんの背後には巨大な黒い影が見えた。


それは体長4メートルはありそうな巨大なクマだだった。


クマは腕を振り上げ、リコちゃんを襲おうとしている。


「リコちゃん!!危ない!」


「へ?」


バッ!!


俺は咄嗟にリコちゃんにタックルし、そのままクマの股の下を潜り、クマの攻撃を避けた。


そして、クマを見る。


クソッ!巣から出ていたのか!!


「グルルッッッ!!」


クマは振り向き、俺達をじっと見つめる。


デカい......こんなのに人間が勝てんのかよ。


俺は腰に付けた剣アンヘルを抜き、リコちゃんの前に立つ。


「リコちゃん、下がって」


カエデは洞穴の中へ行っちまった。俺がやるしかない。


クマとの距離は約5メートルほど......油断したら一瞬でやられちまうな。


俺は冷や汗を垂らす。


クソッ!俺がやられちまったらリコちゃんもただでは済まない......


ここは慎重に間合いを取って......


「グラァ!!」


「なっ!?」


その瞬間、クマが地面を蹴り、勢いよく俺に向かって腕を振り下ろしてきた。


俺は咄嗟に剣で防ごうと、横に持って左手を剣身に添えた。


ガキッ!!


クマの鋭い爪が剣に当たり、金属音がコダマする。


「グアッ!!」


それと同時に、防ぎきれず吹き飛ばされる俺。


俺は地面に倒れる。


「ロイさん!!」

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